投資を始める人が必ず持つべき「3つの物差し」 

2026年春の「やりたいことランキング」で資産形成が第2位にランクインしました。第1位は運動ですが、資産形成を始めたいと考えている方も多くいらっしゃることでしょう。この世界には様々な罠やトラップが潜んでいますので、資産形成を始める上で気をつけるべきポイントについて解説します。

投資を始めようとするとき、ワクワクする気持ちと同時に不安を感じる方も多いと思います。やる気があるからこそ情報に惑わされたり、前のめりになってしまうことがあります。そのため、判断の基準となる「物差し」をぜひ持っておいてほしいと思います。

投資を始める人が必ず持つべき「3つの物差し」(1:18)

投資を始める方に持っておいてほしい物差しは3つあります。それは「金利水準」「利回り水準」「円という特殊性」です。 この3つについて順に取り上げていきます

①無リスク資産の物差し(1:41)

まず持っておきたいのが、無リスク資産の物差しです。無リスク資産とは、元本保証商品または元本確保商品と呼ばれるものの金利のことです。日本円で元本保証・元本確保の商品を手に入れたとき、基準となる金利が何パーセントなのかを知っておくことが重要です。

なぜこれが必要かというと、「元本保証」を謳いながら「利回り何パーセント」という形で安全性を強調して投資へ誘導するような広告や商品が存在するからです。まず「この金利以上はありえない」という上限を知っておくことで、騙されるリスクを大きく減らせます。

無リスク資産の金利の基準としては、個人向け国債の変動10年が適切です。これは個人が購入できる商品の中で、現時点での金利の最高水準と考えてよいでしょう。固定5年・固定3年という商品もありますが、それらは流動性リスクを伴います。変動10年も最初の1年は流動性リスクがありますが、1年を過ぎればいつでも引き出せるため、基準として適しています。

現時点では令和8年4月6日募集分で1.55%、税引き後はやや下がりますが、この1.5%という数字を一つの基準として持っておいてください。これを知っておくことで、怪しい投資商品の嘘を見破ることができます。

たとえば「元本保証で利回り3%」「元本確保で利回り7%」といった商品が現れたとき、1.5%という基準があれば「何かおかしい」と気づけます。その差はどこから生まれているのか、明確な答えがない限り、感情論や情報の歪みで誘導されている可能性が高いといえます。資本主義の仕組みとして、見ず知らずの相手のために特別に働いてくれる存在はいません。基準を持っておくことで、こうした罠を避けられるのです。

元本保証という謳い文句が出てきたら、個人向け国債変動10年の金利と比較してみてください。1%以上の差があれば、何らかの隠れたリスクが存在すると考えるべきです。

②基準となる利回りについて(6:14)

2つ目は、基準となる利回りを知ることです。長期投資における期待利回りとして、名目7%・実質5%という数字が参考になります。インフレを考慮しない場合は7%、考慮する場合は5%です。どちらで覚えていただいても構いませんが、迷ったら名目の7%で覚えておくとよいでしょう

ここで重要なのは、利回りにはインカムゲインとキャピタルゲインの2種類があり、投資家は常にこの合計であるトータルリターンで考える必要があるという点です。不動産投資であれば家賃収入だけでなく売却価格の変動も含めて判断する必要があります。

リスクを取って価格変動商品に投資した場合、期待できる利回りの幅は大体5%から9%程度の範囲に収まります。たとえばリーマンショックの底値で購入していれば8%を超えることもありますし、頂点で投資していれば5%程度まで下がることもあります。世界中の投資商品を見渡しても、自分のお金をそのまま投資商品に回す場合、この5〜9%という範囲に収まってしまうというのが実態です。

2桁、つまり10%以上の利回りを求める声はよく聞きますが、これはトレードの領域になります。長期投資で年7%増えるとわかっているなら、短期投資ではそれ以上のリターンでなければ手間をかける意味がありません。そのため短期売買を繰り返しレバレッジをかけていくことになりますが、これはもはや投資というより労働に近い行為です。

安定して2桁の利回りを得るためには、帰宅後の自由時間をすべて費やして1年間ほど集中して学び、経験を積む必要があります。センスがなければ1年でも身につかないこともあります。「簡単に」「誰でも」という言葉とともに10%・20%の利益が出ると謳うものは、まず疑ってかかるべきです。

また、短期投資のロジックは公開した時点でその優位性が消えてしまうという性質があります。多くの人が同じ手法を使えば歪みがなくなり、利益が得られなくなるからです。一方で長期投資はお金が集まれば集まるほど効果が高まる傾向があり、これが両者の本質的な違いです。

本当に儲かる方法があるなら、低金利の資金を調達して自分で運用すれば済む話です。それをわざわざ他人に教えて販売するというのは、論理的に矛盾しています。

③円の立ち位置を理解する(17:38)

3つ目は、円の立ち位置を理解することです。投資を始める方には従来「円安リスクがあるから海外投資を」という案内が一般的でした。これ自体は間違いではありません。しかし最近は行き過ぎた傾向があり、海外資産への投資比率が高くなりすぎている問題が生じています。SNSやYouTubeの影響で100%海外資産という方もいるほどです。

投資においてはバランスが重要で、日本円だけでも海外資産だけでも偏りすぎです。何事も行き過ぎると反動が来るのが投資・経済の世界の常であり、バランスを保つことが長期的には最も安全です。

「給与や年金はすべて円だから、金融資産はすべて海外でよい」という意見を見かけることがありますが、これは考え方の前提が不完全です。年金は一括でもらえるものではなく、2か月に1回少しずつ受け取るものです。また投資している金融資産がすべて老後資金として使えるかどうかも個人の状況によります。下落局面で資産が大きく目減りしているタイミングで使わなければならない場面も出てきます。

退職金が確定的に大きくある方で、それを円資産として組み込んだうえで金融資産をすべて海外に向けるというプランは、個人の属性によっては成立することもあります。しかし多くの方は退職金の金額を、実際に受け取るまで詳しく把握していません。老後の資産設計ができていない状態で「海外資産だけでよい」と判断するのは、やや乱暴といえます。

万人に通用する方法として考えると、国内外の資産をバランスよく持つことが、より多くの方にとってベターな選択です。いつ使うかわからないお金を運用する場合はなおさら、リスクを分散しておくことが望ましいでしょう。

まとめ(26:02)

今回お伝えした3つの基準をまとめます。

1つ目は無リスク資産の金利です。個人向け国債変動10年を基準に、現時点では1.5%程度と覚えておいてください。日本円建てで元本保証・元本確保を謳う商品がこれ以上の利率を出すことは、国の力を使っても難しいことです。民間でそれを上回る利率を実現するのは、構造的にありえません。

2つ目は利回りの基準です。長期投資では5〜9%の範囲を目安にしてください。10%や20%を「簡単に」「誰でも」実現できると謳うものは、まず疑ってかかるべきです。この基準を持っておくだけで、投資詐欺に引っかかるリスクは大幅に低下します。

3つ目は円の立ち位置の理解です。国内資産と海外資産をバランスよく持つことが、多くの方にとって適切な方法です。老後資産設計が完成していて退職金の金額も把握できているという特定の条件が整っている場合を除き、全額を海外資産にするのは避けた方が無難です。

この3つの基準を持ったうえで、資産分散という考え方を取り入れながら投資を始めることをお勧めします。現在はNISA制度など投資環境も整っていますので、積み立て投資であればいつ始めても遅くはありません。

またこちらの動画「【資産を増やす】初心者が絶対に守るべき!NISA活用10ヶ条」では、新NISAの基本と活用ポイントを解説していますのでぜひご覧ください。

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