4〜6月の残業を減らせば社会保険料は安くなる?知っておくべき「2つの大いなる誤解」と現実的な対策
社会保険料は、特に若い世代にとって大きな負担となっています。そこでよく耳にするのが、「4月から6月の残業を減らせば社会保険料を下げられる」という裏技です。この期間の残業を抑えることで給与が下がり、それに基づいて算定された社会保険料が1年間続くため、年間を通じて負担が軽くなるというものです。
事実ではあるのですが、実際にはあまり効果がない場合もあります。制度をあらためて整理しながら、自分にとって有効かどうかを考えてみてください。
なぜ「4〜6月」が重要と言われているのか(1:34)
協会けんぽの保険料一覧表を見ると、「標準報酬月額」という概念があることがわかります。自分の報酬月額がどの範囲に該当するかによって、一律の金額が定められており、その標準報酬月額に対して一定のパーセンテージをかけることで、健康保険料・介護保険料・子育て支援金・厚生年金保険料が計算されます。
等級ごとに区切られているこの仕組みは、かつて大企業が多数の従業員の給与計算を行う際の手間を省くために設けられたもので、現在もその名残として残っています。
標準報酬月額の算定に含まれるもの(4:18)
標準報酬月額の算定基礎となる「報酬月額」には、基本給のほかにさまざまな手当が含まれます。固定的に支払われるものとして、通勤手当・住宅手当・家族手当・役職手当・資格手当・日直手当・宿直手当・現場手当などが該当します。
一方、変動して支払われる非固定的賃金としては、残業手当(時間外労働手当)・休日手当・能率手当・歩合給・深夜労働手当なども含まれます。さらに、通勤定期券の現物支給・食事の無償提供・社宅・自社製品の現物支給なども報酬とみなされます。また、年4回以上支払われる賞与についても報酬月額に含まれます。
標準報酬月額の算定に含まれないもの(6:42)
算定に含まれないものとしては、年3回以下の賞与があります。これは標準賞与額として別途計算されるため、月額には含めません。そのほか、大入り袋・お見舞い金といった臨時・突発的な支給、出張旅費、結婚祝金・弔慰金といったものも報酬には該当しません。
また、テレワーク手当のように労働者のインターネット環境や光熱費などの実費を補填する性格のものも、弁償的な手当として算定基礎には含まれません。こうして見ると、ほとんどの手当が算定に含まれてしまうことがわかります。そのなかで金額が大きくなりがちなのが残業手当であり、自分でコントロールできる余地があるとすればここになります。
やってしまいがちな「2つの大いなる誤解」(8:29)
残業を減らす取り組みにはよくある誤解があります。まず1つ目は、「4月から残業を減らせばいい」という思い込みです。多くの会社では月末締め翌月25日払いなどの給与サイクルを採用しているため、4月に支払われる給与は3月に働いた分になります。つまり、4月・5月・6月の支払い額を抑えるには、実際には3月・4月・5月の残業を減らす必要があるのです。年度末の3月に残業を大幅に減らすのは、現実的に非常に難しいといえます。
2つ目の誤解は、「有給休暇を取れば支払額が減る」というものです。有給休暇は欠勤ではなく、通常どおりの給与が支払われます。そのため、有給を取得しても報酬月額は変わらず、社会保険料も下がりません。
頑張って残業を減らしても報われない2つの理由(10:42)
努力しても報われないケースも存在します。1つ目は、残業を減らそうとしても結果的に残業が残ってしまうという問題です。従業員側の立場からすると残業はコントロールしにくく、会社が「残業禁止」と方針を示さない限り、業務を残して帰ることは難しい場面も多くあります。日本の企業文化として、業務を未完のまま退社することへの抵抗感は依然として根強いといえます。
2つ目は、「臨時改定」が発生するリスクです。4月・5月・6月の報酬を抑えることができても、他の月に報酬が大幅に増えてしまった場合、年1回の定時改定を待たずに標準報酬月額が変更される「臨時改定」が行われることがあります。
臨時改定が発生する条件は3つあり、固定的賃金に変動があったこと、変動後3か月間の平均で算出した標準報酬月額が従来の等級から2等級以上ずれること、そして3か月とも支払基礎日数(出勤日数)が17日以上であることです。これら3つをすべて満たすと、変動後4か月目から標準報酬月額が改定されます。
2等級とは?(18:41)
等級の幅は概ね2万円程度です。つまり2等級ずれるということは、報酬が約2万円以上変動するということを意味します。昇給や役職変更があった月は、慣れない業務や引き継ぎなどで残業も増えやすく、固定的賃金の上昇に加えて残業手当も増加するため、結果として標準報酬月額が上がってしまうケースは少なくありません。
4月・5月・6月の残業手当は算定に含まれますが、臨時改定の起点となる固定的賃金の変動はそれとは別の話であるため、注意が必要です。
社会保険料を安くする他の方法はある?(20:11)
残念ながら、従業員の立場から社会保険料を主体的に下げる方法は非常に限られています。入社日や退職日の調整で一時的に社会保険から外れる日をつくるというテクニックが紹介されることもありますが、その間は国民健康保険に加入しなければならず、かえって負担が増えることもあります。
昇給を7月以降にずらすという会社側の対応策もありますが、従業員にはどうしようもありません。福利厚生を充実させて給与を下げる方法もありますが、現金で受け取りたいという方が大半でしょう。
唯一、従業員にとって現実的な手段として挙げられるのが「企業型確定拠出年金」の活用です。企業型確定拠出年金への拠出額は報酬とはみなされないため、社会保険の算定基礎に含まれず、結果として社会保険料を下げることができます。まだ導入されていない会社には、ぜひ導入を求めてほしい制度です。
まとめ(25:29)
個人でできる現実的な策として4月・5月・6月の残業を減らすという方法はありますが、実際には3月・4月・5月の残業を減らす必要があり、年度末の繁忙期に重なるため実行は難しいのが現実です。また、昇給などで臨時改定が発生すれば元に戻ってしまうこともあります。
社会保険料を無理に下げようとするよりも、収入そのものを増やすことを考えるほうが現実的です。スキルを磨いて転職や社内での評価向上を目指すこと、そして資産形成に取り組むことが、手取りを実質的に増やすための有効な手段といえます。
企業型確定拠出年金が使える環境にある方はぜひ活用し、そうでない方はiDeCoを通じた積立投資も検討してみてください。稼いだお金を安全に増やすためには、資産分散の考え方を取り入れることも大切です。
またこちらの動画「【NISAも要注意】投資の利益で社会保険料が上がる!? 今すぐできる回避策」では、扶養内で投資をする際の注意点や、社会保険料が上がるのを避けるための対策を解説していますのでぜひご覧ください。





