「10兆円の運用資産が非課税」聖域にメスは入るのか?宗教法人の不公平な非課税と問題点

宗教法人は株式投資でいくら利益を得ても非課税になるという、驚くべき実態が話題を呼んでいます。資産規模でいえば、宗教法人全体で運用されている資金は10兆円にのぼるとも言われており、それが全額非課税になっているという現状です。

今回は、長年問題として指摘されながらも手がつけられてこなかった宗教法人への課税について、その仕組みや問題点を整理していきます。

宗教法人の不公平な非課税と問題点(1:32)

まず前提として、宗教法人だからといってすべてが非課税になるわけではありません。お布施やお守りといった宗教行為に伴う収入については、法人税も消費税も非課税の扱いとなっています。一方で、収益事業については課税対象とされています。

ただし、宗教法人に対して国が強く関与しようとすると、憲法20条が定める政教分離・信教の自由の問題が生じます。国は宗教に対して特別な優遇も干渉もしてはならないという憲法上の権利があるため、これまで踏み込んだ課税が難しかったという経緯があります

宗教法人への課税は強まっている(3:11)

しかし近年、国税庁や最高裁判所の姿勢は変わってきています。事業性が認められるものについては適切に課税すべきという方向性が強まっており、宗教法人が裁判で争っても敗訴するケースが増えています。

一般投資家であれば株式の利益に対して20.315%の税率が課されるうえ、社会保険料への反映なども議論されているなか、宗教法人が非課税のまま運用益を得られるのは公平性に欠けるという声も高まっています

事業なのか宗教活動なのか(4:23)

宗教法人をめぐる課税の難しさは、どこからが宗教行為でどこからが事業になるのかという線引きにあります

たとえば宿坊については、もともと信者が修行のために宿泊する場所として非課税とされていましたが、実態としてインターネット予約サイトへの掲載や豪華な客室・精進料理を売りにした観光客向けの宿泊業として機能しているケースも増えており、近隣のホテルや旅館と競合しているにもかかわらず非課税というのは不公平だという見方があります。

また、座禅やヨガ、断食ワークショップ、企業研修といった有料の体験イベントや講座も、宗教行為から独立した技能の教授として事業性があると判断されれば課税対象となりえます。駐車場の貸し出しについては1993年の判決ですでに収益事業として法人税の対象とされており、拝観者のための利便性確保を超えて収益活動を目的としていると認定された事例があります。

敷地や会場の貸し出し、撮影スタジオとしての利用なども課税対象かどうかが問われています。物品販売については、お守りやお札、おみくじは宗教性が強いとして非課税ですが、絵はがきや写真集、カレンダー、ろうそくといった一般的な物品は課税対象です。小規模な宗教法人のなかには届出をしていないケースもあり、それは実質的な脱税にあたります

さらに、宗教法人の数自体は減少の一途をたどっている一方で、実態のほとんどない法人格を売買し、非課税の仕組みを悪用しようとする事例も出ています。2017年以降は、実態として宗教法人ではなく外部の事業者が支配している場合、その法人の非課税性が否定されるという判断が増えています。

また、住職や関係者が生前に個人資産を宗教法人名義に移転して相続税を回避しようとするケースもありますが、こうした形式的な名義変換には贈与税や相続税が課されるという判決も出ています。

現実的なのは売買益への課税か(11:38)

もちろん、宗教法人の運用すべてを否定することが正しいわけではありませんたとえばお寺の建物の屋根の修繕など、まとまった費用が必要な場合に寄付金を積み立てておき、インフレに対応するために運用するというのは、一定の合理性があります。ただ、信教の自由の保護という観点からどこまで許容するかは難しい問題です。

現行の法人税法が34業種の列挙方式をとっているため実態ベースの課税と矛盾するという指摘もあり、収益性の高い所得への課税や、寄付金控除を活用する方法など複数の代替案が提示されています。障害者向けの非課税制度のように、一定の金額までを非課税とするキャップを設ける方式も一つの考え方として挙げられるでしょう。

平成20年の最高裁判決では、事業の継続性と競争関係の有無が課税判断の基準とされました。この判決で争われたのはペット葬祭業で、宗教法人しかできない行為ではなく民間事業者も参入しているという理由から、商業活動として課税対象と判断されています。終活支援やカウンセリングなど、かつては宗教独自の領域とされていたものに民間が参入するケースも増えており、課税の境界線は今後さらに問い直されていく可能性があります。

政府の意向(16:28)

政治的な文脈でいえば、公明党が連立政権を離脱した流れのなかで、宗教法人への優遇措置に対する見直し論議が加速しやすくなっているという見方もあります。旧統一教会の問題をきっかけに宗教に対する国民感情も変化しており、宗教法人だからといって何でも非課税でよいという空気は薄れてきています。

京都のように宗教法人が多く集まる地域では、税収があれば財政難は起きないのではないかとも言われており、観光客による混雑や生活環境の悪化に悩む地域住民の声と、税制のあり方とを結びつけた議論も出てきています。不公平感の解消という観点からも、事業性のある活動に対してはしっかりと課税する方向に向かうことが望ましいと考えられます

宗教法人の運用資産についても、10兆円という規模を考えれば何らかの制度的な対応が必要です。金額にキャップを設けるのか、原則課税として別途手当てをするのか、具体的な方針はまだ定まっていませんが、株式運用による配当や売買益まで全額非課税という現状は、一般の投資家との公平性の観点から見直しが求められています。

一般投資家にとっても非課税は最強(20:40)

一方で、一般の投資家にとっても非課税で活用できる制度は存在します。NISAでは1800万円の枠内で運用益が非課税になります。かつてはなかった制度ですが、今では強力な資産形成ツールとなっています。加えてiDeCoや企業型DCといった確定拠出年金も、掛金の段階から非課税という優れた制度です。出口で課税される部分はあるものの、特定口座での運用と比べればメリットが大きいといえます。

社会保険料への反映など懸念される変化もありますが、iDeCoについては退職所得として受け取るなどの工夫により影響を最小限に抑えることが可能です。NISAだけで満足して特定口座での運用をやめてしまうのはもったいないという考え方もあります。国が定めた枠の中だけで資産形成を完結させるのではなく、複数の制度を組み合わせて選択肢を広げておくことが、将来の制度変更にも対応できる強みになります。

まとめ(22:32)

iDeCoの活用については別の動画でも詳しく解説しているとのことですので、まだ始めていない方はぜひ確認してみてください。老後資金を安定的に準備している人のほぼ全員がこれらの制度を活用しているといっても過言ではありません。運用の具体的な方法についても、アセットアロケーション運用という考え方を学べる無料体験会を開催しています。株式だけに偏らず、安定的かつリターンを狙える資産分散の方法を学ぶ機会として参加を検討してみてはいかがでしょうか。

またこちらの動画「なんでiDeCoやらないの!?NISAだけの人は要注意!老後資金に『決定的な差』が出る理由」では、iDeCoを使わない場合に老後資金で差が出る理由を解説していますのでぜひご覧ください。

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