【50代・60代】退職金を投資する前にやるべき5つのこと
老後を目前に控えた方にとって、退職金をどのくらい投資に回せばよいのかは大きな悩みのひとつです。
その判断をするためには、まず投資を始める前にやるべきことが5つあります。
【50代・60代】退職金を投資する前にやるべき5つのこと(0:48)
退職金を投資する前にやるべきことは、収入を把握すること、支出を把握すること、不測の事態に備えること、1年を超える支出を書き出すこと、そしてリタイア時の資産額を書き出すこと、この5つです。これらを把握していないと、本来投資をしなくてよい人が必要以上に投資をしてしまうケースも起こりかねません。逆に、手当てが不十分なまま老後を迎え、思い描いていた生活とかけ離れた結果になってしまうこともあります。
収入を把握する(1:33)
退職後から100歳までを視野に入れて、定期的な収入を全て洗い出しましょう。「人生100年時代」という言葉があるとおり、少し余裕を持って100歳を目安にしておくことで安心感が生まれます。貯蓄は除き、定期的に入ってくる収入として主に考えられるのは公的年金です。それ以外に個人年金保険や企業年金がある方は、それらも収入として把握しておく必要があります。
公的年金については、実際にいくらもらえるか知らない方が少なくありません。毎年送られてくるねんきん定期便には、現時点で辞めた場合の金額しか記載されていないため、実用的な情報としては不十分です。「ねんきんネット」を活用すると、自分が想定する給与水準を設定して将来の受給額を試算できます。
ただし、ねんきんネットで確認できるのは現在の水準での支給金額です。将来的にはマクロ経済スライドによって年金額が段階的に引き下げられていく見通しであり、政府の試算では所得代替率が60%台から50%程度まで低下すると予想されています。おおまかに言えば、現在試算される金額の約8割が実際の受給額の目安になります。さらに、年金受給者も税金と社会保険料を負担するため、支給金額に0.9をかけた金額が手取り額の目安です。 つまり、ねんきんネットで確認した金額に0.72をかけた値が実際の手取り収入に近い数字になります。
支出を把握する(8:01)
老後の支出は、今の生活レベルをそのまま基準にして考えると分かりやすいです。老後に世帯の人数が変わる場合は、計算し直す必要があります。例えば、現在子どもと3人暮らしで老後は夫婦2人になる予定であれば、今の生活費を世帯人数の平方根で割って1人分の生活費を求め、そこに老後の世帯人数の平方根をかけることで老後の生活費を算出できます。
3人世帯であれば今の生活費を√3(約1.73)で割り、老後の2人世帯であれば√2(約1.41)をかけるという形です。これは「等価可処分所得」という考え方に基づくもので、ファイナンシャルプランニングにおける基本的な手法です。
老後の生活においては、収入より支出が上回るのが一般的です。公的年金だけを収入とした場合、多くの家庭では月々の生活費の方が大きくなるため、貯蓄を取り崩していく生活設計が前提となります。
そのため、老後の生活費の中に貯蓄・投資の分を別途含める必要はなく、今の生活費から貯蓄・投資に回している分を除いた金額を生活費として把握すれば十分です。
不測の事態に備える(12:26)
日々の生活の中で予定外の出費は必ず発生します。そうした際にすぐ引き出せるお金として「生活防衛資金」を確保しておくことが重要です。目安は生活費の3〜6か月分、ざっくり1人あたり100万円程度です。夫婦2人の場合は1人の1.4倍ほどが理論上の目安ですが、老後は何かと不安も増えるため、2人で200万円としておいても問題ありません。
さらに、将来的に医療費の負担が増加する可能性を考慮しておく必要があります。退職後から100歳までの医療費として、1人あたり500万円を目安に準備しておくと安心です。介護費用についても同様に、制度によってばらつきはありますが、1人あたり500万円を目安にしておくとよいでしょう。つまり、医療費と介護費を合わせて1人あたり1,000万円が不測の事態への備えとなります。
夫婦の場合は合計2,000万円になりますが、どちらかが軽度の介護を必要とする場合はもう一方がサポートできることも多く、すぐに施設への入居が必要になるわけではありません。夫婦でいる場合はリスクに対しても2人で対応できるため、夫婦2人で合計1,000万円あれば基本的な備えとして十分だと考えられます。
1年超の支出を書き出す(17:03)
毎月の生活費には含まれていない、数年に一度発生するまとまった支出があります。車の買い替え費用、旅行費用、住宅のリフォーム費用などがその代表例です。特にマイホームをお持ちの方は、屋根や外壁のメンテナンス、水回りの交換、バリアフリー化といったリフォーム費用が老後に必要になることが多く、場合によっては数百万円単位の出費になることもあります。
退職から100歳までの間に必要となるこうした支出を書き出すのは難しく感じるかもしれませんが、まずは概算でも構いません。具体的な金額が分からなければ、リフォーム会社に見積もりを依頼するだけでも目安を知ることができます。細かく計算できない場合の目安として、夫婦2人であれば車・旅行・リフォームなどを含めた1年超の支出の合計は、おおよそ1,000万円程度とされています。 もちろん個人差はあるため、できる限り自分の家庭に合った内容を書き出すことが大切です。
リタイア時の資産額を書き出す(23:18)
リタイア時に手元にある資産を全て洗い出しましょう。預金、保険の満期金、NISAの運用資産、iDeCo、企業型DC、企業年金の一時金、そして退職金が主な対象です。退職金については近年減少傾向にあると言われますが、支給される場合は資産に含めて計算します。
現時点の資産をそのまま使うのではなく、退職までの運用によってどのくらいに増えるかを試算することも大切です。投資方法にもよりますが、インフレを加味すると年利5%程度を目安に計算するのが一つの基準となります。ただし、元本確保型の商品しか使っていない場合などはこの利回りに届かないため、自分の運用内容に合わせて調整してください。
「絶望を味わう」からスタート(27:07)
ここまでの5つを整理すると、退職後の収支と必要な資産が見えてきます。収入から支出を引いた毎月の不足額に、退職から100歳までの年数をかけることで総額が算出でき、そこに生活防衛資金・医療費・介護費・1年超の支出を加えた合計が「必要な金額」です。それに対して退職時点での保有資産を照らし合わせると、多くの方が大きなマイナスになります。
この計算結果に「絶望」することが、実はスタートラインです。現実を直視することで初めて、何をどう改善すればよいかが見えてきます。支出を減らせるか、収入を増やせるか、資産運用に取り組めるか、という具体的な検討につながっていきます。
また、今の時代はインフレが進行しており、現金のまま置いておくだけでは資産の価値が目減りしていきます。インフレを上回る運用益を得ることが、老後の生活を守る上で重要な意味を持ちます。老後の不安の多くは「知らないこと」から来ているため、まずは自分の状況を数字で把握することが何より大切です。
まとめ(29:26)
今回紹介した5つのステップの出発点は「年金をいくらもらえるか」を正確に知ることです。年金額さえ把握できれば、毎月の不足額が計算でき、そこから必要な積み立て額や運用規模も芋づる式に算出できます。年金制度は破綻するわけではありませんが、年金だけで生活できる時代は終わりつつあります。正しく理解した上で、自分に必要な備えを計画的に進めていくことが求められます。
ねんきんネットを使った年金額の試算方法から老後の資金計画の全体像まで、自分自身の数字を把握するための時間をぜひ取るようにしてみてください。面倒に感じるかもしれませんが、自分の家庭の実情は自分にしか分かりません。それを明らかにすることが、充実した老後への第一歩になります。
またこちらの動画「退職金が振り込まれても銀行に行ってはいけない理由」では、退職金向け商品の落とし穴と手数料の注意点を解説していますのでぜひご覧ください。





