「S&P500やめました。これからは国際分散投資です!」がそもそも負け戦の理由

SNS上で「アメリカ一極集中をやめて国際分散投資にシフトする」という声をよく見かけるようになりました。

では、国際分散投資とは何なのか、また次に盛り上がる国や地域の波に乗り換えていくことは本当に可能なのかについて、改めて解説していきます。

国際分散投資とは?(1:13)

国際分散投資の考え方を整理すると、基本的には「地域の分散」と「資産の分散」を組み合わせたものです。地域としては日本・先進国・新興国に分けられ、資産クラスとしては債券・株式・不動産(リート)が主な対象となります。さらに、ヘッジファンドやベンチャーキャピタル、先物・オプションといった金融派生商品など「オルタナティブ」と呼ばれる分野も存在します。

これらを組み合わせると、おおむね8つのアセットクラスへの分散が基本的な国際分散投資の姿です。このアセット間のバランスを整えて運用していく考え方を「アセットアロケーション運用」と呼び、ノーベル経済学賞を受賞したマーコウィッツ氏の理論を基礎として、現在の年金基金などでも主流となっている手法です。

S&P500はこの枠組みの中で言えば「先進国株式」の中の「米国株式」に該当します。つまり、S&P500だけに投資していた方は、8つあるアセットクラスのうちの1点集中であり、先進国の中でもさらに1点集中していた状態だったと言えます。

S&P500からオルカンへの分散投資は意味がある?(5:43)

S&P500に陰りが見え始めたとして、オルカン(全世界株式インデックス)へ乗り換えようという流れが増えています。ただし、これは株式という資産クラスは変わらず、単に米国中心から先進国全体・日本・新興国へ比率を広げるだけです。日本に5%程度、新興国に10%程度分散するとはいえ、アセットの種類自体は変わらないため、分散投資として十分かというと、まだ弱いと言わざるを得ません。

実際にデータで比較してみると、2003年1月から2025年6月の期間において、S&P500(USA)はリターン約10%・リスク約18%でした。一方、全世界株式(ACWI)はリターン約8%・リスクはほぼ同水準です。株式だけで構成されている以上、リスク(価格変動の大きさ)はどちらもあまり変わらないのです。

アセットアロケーション運用によりリスクを約11%に抑えつつ約7%のリターンを得る運用と比べると、株式のみでの分散では本質的なリスク低減にはなっていないことが分かります。

多くの方が誤解している「資産分散」(11:26)

投資の3原則のひとつである「資産分散」は、長期投資においてリスクをできるだけ抑えるための考え方です。分散したからといって利益が出ないわけではなく、リスクを抑えながらも一定のリターンを継続的に得ることができます。再現性の高い運用を目指すのであれば、株式だけでなく債券・不動産なども含めた幅広い資産への分散が本来の意味での国際分散投資と言えます

SNSでの情報を見て「自分もそうしよう」と追随した場合、その運用スタイルに本当に耐えられるかどうかは人それぞれです。相場が大きく下落したときに継続できるかどうかを、事前に自分自身で考えておくことが重要です。

トレンドフォローなんてできない(14:17)

「アメリカの次はインドだ」「いや中国だ、アフリカだ」といった形で次に来る地域を見極めて波に乗り続ける手法を「トレンドフォロー」と呼びます理論上うまくいけば理想的ですが、実際にそれができるなら誰も苦労しません

そもそもこのトレンドフォローを組織的・専門的に行っているのがアクティブファンドです。プロの運用者がデータ分析を駆使して銘柄を選び、機動的に入れ替えを行っています。では、そのプロたちの成績はどうだったのでしょうか。

アクティブファンドの結果(16:12)

出典:SPIVAⓇ日本スコアカード

S&Pが公表しているSPIVAレポートによると、2024年のデータでは15年間の運用成績において、グローバル株式のアクティブファンドの100%がベンチマーク(インデックス)を下回る成績だったことが示されています。日本国内のファンドでは若干成績が良く、それでも70〜80%がアンダーパフォームという結果です。

日本のファンドが相対的に成績が良いのは、日本のインデックス自体の効率性がまだ十分でないからという見方もあります。東証の市場再編が進んでいる過渡期にあり、JPX400やJPXプライム150といった新しい指数も登場していますが、インデックス自体の整備はまだ道半ばという状況です。

インデックスに勝てなかったのはプロ中のプロです。個人投資家がたまたまS&P500やインド株で成功したとしても、それを長期にわたって繰り返すことはプロでさえできなかったという事実は、投資判断において非常に重要な示唆を与えています。

まとめ(18:51)

一度うまくいった投資判断を何度も再現し続けることは、プロの運用会社ですら15年間で誰も達成できなかった事実がデータで示されています。自分自身で当てられると判断するのであれば、それは個人の自己責任の範囲です。しかし、次に来る地域を予測することに自信がなかったり、リサーチが手間だと感じたりするのであれば、アセットアロケーション運用という方法論を選択肢のひとつとして知っておく価値があります。

「S&P500から国際分散投資へ」という流れ自体は悪くありません。ただし、株式から株式への乗り換えにとどまるのではなく、債券・不動産なども含めた本来の意味での資産分散を意識することが、長期的に安定した資産形成につながります。どんな手法を選ぶにせよ、SNSの情報に流されるだけでなく、自分自身で理解した上で判断することが大切です。

またこちらの動画「【最新データ検証】9割のアクティブファンドはインデックスに負けるって本当?」では、最新データをもとにアクティブファンドの実績と注意点を解説しているのでぜひご覧ください。

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