eMAXIS Slim米国株式(S&P500)国内初の純資産総額10兆円を突破。私たちが知っておくべき「不都合なデータ」
eMAXIS Slim米国株式(S&P500)が国内初の純資産総額10兆円を突破しました。この数字はモンスター級の快挙と言えます。
しかし喜ばしい反面、年始からアメリカ市場には不穏な動きも見られ、ベネズエラ問題をはじめとする地政学的リスクへの不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
国内純資産総額10兆円突破(0:48)
1月8日に発表されたプレスリリースによると、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)はETFを除くファンドとして国内初の純資産総額10兆円超えを達成しました。5兆円を突破したのは2024年6月24日、わずか1年半前のことです。1兆円突破は2022年2月10日でしたから、コロナ明けから急速に成長し、桁が一つ増えるという驚異的なペースです。
人気を二分するeMAXIS Slimオールカントリーも9.4兆円に達しており、ほぼ同水準で推移しています。アメリカではバンガードのVOO(S&P500連動ETF)が約130兆円、VTI(全米株式)が約90兆円となっており、VOOの方が1.5倍ほど規模が大きくなっています。これと比較すると、日本ではオールカントリーの人気が相対的に高く、日本の投資家の方がより世界分散を意識しているとも解釈できます。
会員やライブ配信で投資家の話を聞くと、ファイナンシャルプランナーやIFAのセミナーで資産運用を始める際、オールカントリーを勧められるケースが非常に多いようです。これが安全策として提案されているのか、日本人の感覚に合った提案なのかは議論の余地があります。
実際のところ、5兆円が新たに流入したというよりも、2024年から2025年にかけての株価上昇が大きく寄与しています。新規流入資金はむしろ鈍化している可能性があり、相場全体が盛り上がったことが主な要因と考えられます。
50年後もアメリカは世界No.1(5:06)
この人気の背景には「アメリカが世界第1位であり続ける」という信念があります。日本経済研究センターが2025年3月に発表した標準シナリオでは、2075年、つまり50年後でもアメリカが世界経済のトップに君臨すると予測されています。
ただし、ブリックス経済圏の動きも非常に顕著です。インドやブラジルはアメリカを超える成長率を示し、インドネシアやメキシコも台頭してきています。中国も批判を受けながらも米国に次ぐ第2位を維持すると予測されており、日本は相対的に順位を下げていく見込みです。
このランキングに入ってくる国々を見ると、新興国の時代が到来しつつあることが分かります。先進国から新興国への富の移転という、リーマンショック後と似た流れが見られます。アメリカの覇権争いや帝国主義的な姿勢に距離を置きたいという新興国の動きも出ています。
それでもなお、アメリカのトップは揺るがないという予測がS&P500に投資する多くの人の根拠になっています。時代が変わっても変わらない存在として、アメリカに長期投資しようという考え方は一つの戦略として理解できます。
ただし、S&P500だけで本当に良いのか、米国に過度に偏重することへの不安を感じる方もいるのは当然です。インデックス投資が主流になる中で、そのウィークポイントも研究されてきました。時価総額加重平均では、割高なものをより割高に買っていく順張りの動きになるため、バブル崩壊時には大きな打撃を受けるリスクがあります。
実際、先進国でも長期停滞の時代がありました。アメリカも好調な時期はありましたが、15年程度も横ばいや下落が続いた時期が存在します。もし自分の資産形成期や取り崩し期に、たまたまこの15年の停滞期が重なってしまったら「こんなはずじゃなかった」という事態になりかねません。コロナ前を思い出してください。グローバル化が進み、戦争よりも話し合いで解決する時代でした。グローバル化によって価格は下がり、効率性が高まり、協調することが全員の利益になるという考え方が主流で、実際デフレが続いていました。この状況がずっと続くと多くの人が思っていたはずです。
しかしコロナが発生し、ウクライナ戦争が起こり、そして今年1月5日にはベネズエラへの侵攻がありました。実力行使によって覇権や帝国の意思を実現していく帝国主義的な時代に変わろうとしています。このような世の中を、コロナ前に誰が想像できたでしょうか。
世界の覇権国家は変化している(11:01)

出典:credit suisse
世界の覇権を示すデータを見ると、1900年から現在までの時価総額比率の推移では、現在アメリカは世界の約60%を占めています。しかしトランプ大統領が理想とする「黄金のアメリカ」である1950年代から1970年代には、アメリカは世界株式の75%近くを占めていました。まさに世界の中心であり、アメリカがルールそのものだった時代です。
その後、日本のジャパン・アズ・ナンバーワンの時代が到来し、バブル崩壊を経て日本が衰退し現在に至ります。歴史を振り返ると、ポルトガル、スペイン、オランダ、イギリス、アメリカと覇権国家は移り変わってきました。
人生100年で考えると、覇権国家の推移も大体100年と言われており、一生涯でそれほど変化しないように思えます。しかし今が変革期に来ているのかどうかは誰にも分かりません。アメリカという国がナンバーワンでも、地域連合がアメリカを追い越す可能性もあります。人口問題も重要な要素で、先進国と新興国の人口差は歴然としています。
歴代ショック別S&P500(13:29)
過去にS&P500がどれだけ暴落したかを見てみましょう。50%以上下がったのは第1次オイルショックとリーマンショックの2回で、30%程度の下落を含めると4回ほどあります。そしてショックの頻度も上がってきています。
これだけ下がると回復にも非常に時間がかかり、投資家の感情として耐えられるかどうかが問題です。リーマンショックに耐えられなかった人は多くいました。マイナス60%という下落に一般投資家が耐えられるのは、せいぜいマイナス30%までではないでしょうか。しかも恐ろしいのは、リーマンショックでは1年5ヶ月も下がり続けたということです。
リーマンショックの時、分散投資をしていても30%台の下落は避けられませんでした。それでも現在は20年ほど続けているので精度も高まり、より安全にシフトできており、下落を半分以下に抑えられています。こうした暴落は忘れた頃にやってくるものであり、その備えは常に必要だという考え方があることも理解できます。
投資は投資するまでは悲観的に、投資してからは楽観的にというのが基本的なスタンスです。しかし投資しながらも、時代が変わり世界が変わっていく中で、対応していく必要があります。自信を持ってやっていくのは問題ありませんが、自分の感情を押し殺しすぎると、いざショックや災害が起こった時にパニックになったり、立ち直れなくなったりします。心の問題もケアしていく必要があるのです。
分散投資の重要性(16:58)

出典:GPIF
対策として資産分散が有効です。GPIFのデータを見ると、4分散で考えた場合、外国株式が成績良好で、トップを取っている年が多いことが分かります。ワーストは2008年のリーマンショックの時の1回だけです。1年間の騰落率で考えると半分以下になるかもしれませんが、安定的に増えていきます。リーマンショックの時はさすがに30%程度のマイナスでしたが、他の年はほぼほぼトントンか、2桁台のプラスが何年もあります。
上がっているからそちらが良いというのはもちろん理解できます。しかしもっと安全に運用したい、ファイナンシャルプランの実行を妨げたくないという思いがある場合は、資産分散という考え方もあります。自分でアメリカ一本で行くと決めた人を止めるつもりはありませんが、選択肢があることを知らない方も多いのです。
全世界投資では、10資産に分散した時の順位付けをしています。これを見ると先進国株式がトップを取っていない年も結構あります。直近2年は金が強く、リーマンショックの時も金が大きく上がりました。株式は上がりやすく、実際上位を示すことが多いですが、他の資産もバラバラに分散しています。リートも結構入っていますし、新興国株式も意外に入っています。
このように順位を当てることはできません。全世界投資は真ん中、2025年はど真ん中にいます。理想的なのはど真ん中、むしろど真ん中よりちょっと上です。リスクを減らす代わりにリターンは減ってしまいますが、これを長期運用で見ていくと、リスクが大きくなるとその分だけ中央値が下がってしまいます。株式だけに運用するとどんどん下がっていきます。結果として、単一アセットに投資していた場合よりも、分散投資した50%確率の中央値がイコールになります。よりギャンブル性が強まるのです。
単年度ではなく長期運用で考えた時にどうなのかと考えると、また違った目線が必要になります。この知識は難しいのでどこでも語られていません。より安全に運用するという投資を取り入れる方法があるということです。
まとめ(23:04)
投資にはリスクの高いものから低いものまでたくさんあり、皆さんに合わせたもの、皆さんのリスク選好度に応じたものがあります。叶えたい夢もあるはずで、その中でちょうど良いバランスがあるはずです。一つに絞って行くのも問題ありませんが、もし不安を感じているならば、違った方法もあり、投資を継続する方法もあるということです。
そのような方法の一つとして資産分散、全世界投資という方法があります。世界中のほぼ全ての資産を買い、バランスを整えながら毎月見直していく運用を23年間提供し続けており、平均7%程度のリターンを出しています。全ての方に合うとは思いませんが、安全に運用したい、安定的に運用したい、日々の生活の方に集中したいという方には、こういう方法もあるのではないかと思います。
S&P500のファンドやオールカントリーのファンドも、このアセットアロケーション運用に使えます。投資比率を100%ではなく数十パーセントにすることで、他のものも取り入れてより安定させます。その代わり突出したリターンは出なくなりますが、それで良いという方も多いのではないでしょうか。
今回のS&P500米国株式10兆円突破は、日本の比率から言えば本当に快挙です。米国では130兆円ですが、これは全体の8%程度にすぎません。それを超えていくというもので、勢いも止まりません。他が頑張ってくれるものをいただくというのも日本の得意な部分ではあるので、今後も順調に増やしていってほしいと思います。
またこちらの動画「《オルカン1本だけより逆効果?!》S&P500とオルカンの両方に分散投資するのはアリ?」では、十分な資産分散を実現する方法を解説していますのでぜひご覧ください。





