NISA、死亡すると相続はどうなる?
NISA口座を保有している人が死亡した場合、その口座はどうなるのでしょうか。相続税は発生するのか、口座をそのまま引き継げるのか、といった疑問を持つ方は少なくありません。
まず、口座をそのまま相続人が引き継げるのかという点が最初の疑問となります。夫婦の場合、夫が運用していたNISA口座を妻がそのまま受け取れないのか、子供の場合はどうなのか、といった制度の仕組みを理解する必要があります。
また、相続の方法が分かったとしても、相続財産として計算する際にどのように評価されるのかという点も重要です。この評価方法についても整理して説明していきます。
NISA口座の相続についての考え方(1:34)
配偶者や子供が亡くなった時、NISA口座で運用している資産がある場合、今後こうしたケースは増えていくと考えられます。現在、人口の3分の1がNISA口座を開設している状況です。子どもNISAができると、全ての方が口座を作れるようになり、金融庁も口座の拡大を推進しています。
もちろん、使わない人も一定数いるため、全員が利用するわけではありませんが、半分以上の方が利用する未来はそう遠くないと思われます。そうなると、死亡時にNISA資産がどうなるのかという疑問を持つ方が増えてきます。
基本的には、NISA口座の中でずっと運用していても問題ありません。ただし、相続対策などは別問題として考える必要があります。受け取る場合に、今すぐ売却して何か用意しなければならないということはありません。
ファイナンシャルプランナーとしては、75歳以上になると認知症リスクもあるため元気なうちに現金化しておくことや、相続税対策として事前に子供に渡していくことで税負担を少なくする方法を提案することもあります。2世代にわたって資産形成していくのが理想的であり、予備期間での引き出しを高めることも検討できますが、これは今回のテーマとは少し異なります。
死亡するとNISA口座はどうなる?(3:13)
多くの方が知りたい内容は、亡くなった方(被相続人)が保有していた上場株式や上場投資信託(ETF)、普通の投資信託といった資産をどのように引き継げばよいのかという点です。
結論から言うと、相続人のNISA口座に直接引き継ぐことはできません。これは配偶者も含めて全ての方が引き継ぐことができないため、移管という手続きが必要になります。
移管とは、相続人が亡くなった日までは非課税で、それ以降に関しては特定口座に移管するという手続きです。生きていないにもかかわらず、一旦特定口座に移管し、その特定口座の商品を相続人に移管するという流れになります。詳細な手続きについては金融機関に問い合わせることになりますが、基本的にはこのような仕組みです。つまり、NISA口座のままでは引き継げないということになります。
相続後の口座移管と取得価格の考え方(4:15)
相続財産としての価値をどのように計算するかについては、上場しているかどうかで計算方法が変わります。
推奨している投資戦略である全世界投資では、銀行預金や投資信託を使います。これは上場していない投資信託、つまりETF以外の一般的な投資信託です。この場合の計算は比較的簡単で、死亡した日の最後の基準価格(翌日に公表される)に口数をかければ相続財産の価格が算出できます。
一方、上場株式や上場投資信託(ETF)の場合は、計算方法が少し異なります。死亡した日の終値で計算することもできますが、それ以外に3つの選択肢があります。死亡した日がある当月の終値の平均、前月の終値の平均、前々月の終値の平均のいずれか有利なもの、つまり最も低いものを使うことができます。急激に上昇したり下落したりした時に、この選択肢が有効に機能します。
NISA口座で購入できるのはこれらの商品がほとんどですが、それ以外にMRFやMMFなどもあります。これらは少し特殊ですが、それまでにもらっていない利息も含めて計算するというだけなので、相続財産として引き継ぐ際に大きな問題にはなりません。金額もそれほど大きくないと考えられます。
受け取るためには、同じ金融機関の特定口座が必要です。例えば、亡くなった方が夫で、妻が投資に関して何も知らず、夫の口座だけで運用していた場合、これを相続するには妻の名義で同じ金融機関で口座開設をして、特定口座に払い出すという手続きが必要になります。移管手続きの方法は金融機関が用意している「相続上場株式等の移管依頼書」といった書類を提出することで受けることができます。
妻が高齢で投資商品について全く知らないという状態の時には、売却を検討する余地もあります。投資の知識や経験があまりない方にとって、相続するだけでも大変なのに口座開設までしなければならないのは負担が大きいためです。投資初心者が最もつまずくのが口座開設であり、これを短期間のうちに行わなければならない手続きは非常に大変です。そのため、売却して現金化しておくという選択肢も一つの考え方としてあります。
ただし、いつ死亡するか分からないため、通常は投資を継続していて問題ありません。年齢が高くなってきて投資を継続できるかどうか分からないという時には、投資を閉じて銀行預金として引き出すという選択もあります。その時にインフレの影響は受けますが、インフレが高いということは金利も高いため、金利は安いかもしれませんが、わずかながらヘッジしておくという考え方もあります。このように売却しておく場面もあると考えられます。
重要なのは、家族のNISA口座に直接受け入れができないという点です。日本のNISA制度はイギリスのISA制度をモデルにしていますが、イギリスのISAでは配偶者への引き継ぎが可能です。この制度を日本のNISAにも導入してほしいという声は多くあります。家族の中で片方がまとめて運用しているケースは少なくありません。
2人とも健康な場合は、どちらかの口座から引き出すのはそれほど難しくないため、相続を考えると両方の口座で運用しておくのが望ましいと言えます。非課税のものや含み益のあるものが全部なくなってしまうと、1800万円の非課税枠が使い切れないことにもなります。できれば引き継ぎができるようにしてほしいところです。
法律婚を促すという観点からも、配偶者への引き継ぎができるようになると良いでしょう。1人では1800万円の枠ですが、結婚して死別された場合には一時的に1800万円を超えたとしても受け入れられるようにする、といった制度があれば便利です。老後資金であり、課税力がなく、今後の生活費として運用している資産について、配偶者が運用していない1800万円の枠内に収まる範囲で入れられるようにするなどの方法も考えられます。
1年以内に売却するという限定条件であっても良いので、とりあえず引き継げるようにして、1800万円を超えている分については何らかのデメリットがあるという仕組みでも良いと思われます。どのような方法になるかは分かりませんが、そのまま受け入れることができないのであれば、こうした方法も検討の余地があります。
夫婦で最終的に3600万円になっても良いという考え方もあります。ただし、生前贈与は難しく、悪用する人が出てくる可能性もあるため、引き継ぎができるようにしてほしいという希望は、日本の金融や行政の感覚から見ると実現が難しいかもしれません。
そもそもNISA自体が歪な制度設計で、ジュニアNISAのようにスイッチングもできないという問題もあります。設計思想から考えても、配偶者への引き継ぎは実現が難しい夢物語かもしれません。
税制面だけなら生前に売る必要性は基本ない(10:41)
NISA口座自体をそのまま相続することはできませんが、焦って生前に売却する必要がないケースがほとんどです。健康でずっと運用できる場合、わざわざNISA口座の資産を売却しておく必要はありません。
ただし、配偶者や子供が相続対象者になる場合、その人の口座がないと引き受けられないため、遺言書を作成しておき、引き受け人を限定しておくことが有効です。分かる人が代表して受け取り、その人がお金で分配するという方法もあります。遺言でこのように規定しておけば問題ないでしょう。
遺言書は成人になったら20歳であっても1通は書いておいた方が良いと考えられます。何度でも書き直せるものですので、早めに準備しておくことが大切です。
また、NISA口座だけで運用が完結しておらず、特定口座でも運用している場合は、税務処理が複雑になります。引き受けに関しては被相続人が持っている特定口座のある金融機関で口座開設が必要なのは同じですが、相続税を払う場合の取得費加算という特例が使える可能性があるため、特定口座の場合はさらに知識が必要になります。お金がある人は勉強しておくことが重要です。
まとめ(12:04)
今回はNISA口座の相続について説明しました。相続した投資信託を売却して納税資金に充てた場合の特例もあり、少しお得になる可能性があるため、こうした制度も活用すると良いでしょう。
制度のルールを理解した上で、自身の家族に合った選択や準備をしておくことが大切です。NISA口座での投資方法や口座開設の方法については、専門的なサービスで詳しく学ぶこともできます。無料体験会なども活用しながら、NISA制度を上手に活用していきましょう。
またこちらの動画「子どもへの贈与が名義預金にならないようにする注意点は?(銀行口座、NISA口座)」では、子供名義の口座を親が管理している場合の贈与税の注意点について解説していますのでぜひご覧ください。





