繰上償還が加速!NISAで避けるべき5つの投資信託の特徴
金融庁が新たな改正案を発表し、投資信託の繰上償還が今後加速される可能性が高まっています。この法令改正により、投資家にとって望ましくない投資信託が市場から退場しやすくなる一方で、NISA口座で長期投資を行う際には注意すべきファンドの特徴を理解することが重要になってきました。
今回は繰上償還とNISAで避けるべき投資信託の特徴について詳しく解説します。
金融庁の改正案とは(1:18)
4月から5月頃にかけて、金融庁はパブリックコメントを通じて「投資信託及び投資法人に関する法律の施行規則」の一部改正案を発表しました。現在パブリックコメントは終了しており、原案通り施行される可能性が高いと考えられます。
この改正の主な目的は、小規模投資信託の削減です。これまでは一定の規模を下回った投資信託を繰上償還する際、既存の保有者に書面で意見を聞く必要がありましたが、今回の改正により、そうした手続きを簡素化し、より容易に繰上償還できるようになります。
繰上償還とは(2:22)
繰上償還について基本的な仕組みを理解しておくことが重要です。投資信託には設定日があり、多くのオープン型ファンドは信託期間が無期限で設定されていますが、一部は償還日が定められています。
繰上償還とは、予定されていた償還日よりも前にファンドを終了させ、保有者全員に資金を返還することを指します。無期限だったファンドに償還日を新たに設定して終了させるケースも含まれます。
従来は書面での手続きが必要で、特に100円から購入できる証券会社が増えた現在、保有者数が多くなると費用の問題から繰上償還が困難なファンドが存在していました。今回の法令改正により、こうした問題の解消が期待されています。
現在、投資信託の数は6,000以上にも上り、上場株式よりも多い状況です。選択肢が多すぎることで投資家にとって選択が困難になっている面もあり、人気のないファンドや経費率の高いファンドの整理は必要な措置といえるでしょう。
①新規に設定されたファンド(5:58)
ここからは、繰上償還されやすいファンドの特徴を見ていきます。
新規に設定されたファンドは繰上償還のリスクが高い傾向にあります。運用会社は売れると期待してファンドを設定しますが、実際には思うように資金が集まらないケースが多く見られます。
これは一般的な商品開発と同様の現象で、ロングセラー商品となるファンドは稀です。今回の法令改正により、売れ行きの悪い新規ファンドはより早期に市場から退場する可能性が高まっています。
ただし、すべての新規ファンドが危険というわけではありません。一定の条件をクリアしていれば問題ないケースもありますが、基本的には新規設定されたファンドは避ける方が無難でしょう。
②特定の新興国に投資するファンド(7:00)
特定の新興国やセクターに特化したファンドも繰上償還のリスクが高い投資信託の一つです。一時的な人気で資金が集まることはありますが、セクターを過度に絞った投資は流動性の低下や資金流出につながりやすい特徴があります。
実際に長期的に成功しているのは、数百のファンドの中でもごく少数にとどまります。特定の新興国の建設業やエネルギーなど、非常に限定的な分野に投資するファンドでは、資金が集まらずに繰上償還されるケースが過去に何度も発生しています。
③ターゲットイヤー型ファンド(7:48)
ターゲットイヤー型ファンドは特に繰上償還が多い投資信託として知られています。2040年、2050年、2060年といった目標年を設定し、その年まで長期保有することを前提としているにも関わらず、早期償還されてしまうケースが頻発しています。
さらに問題となるのは「歯抜け現象」です。例えば2040年、2050年、2060年の3つのファンドがあった場合、2050年のファンドだけが償還されるといった現象が起きています。
ターゲットイヤー型ファンドは投資対象を年代別に細分化しすぎているため、ただでさえ少ない投資人口がさらに分散してしまい、資金が集まりにくい構造的な問題を抱えています。
④テーマ型ファンド(9:36)
ロボット、電池、AI、半導体といった特定のテーマに投資するファンドも注意が必要です。これらは投機に近い性質を持ち、手数料が非常に高く設定されています。
テーマ型ファンドは時代の流れとともに人気が移り変わるため、長期的に残り続けることは稀です。時代に合わなくなると早期償還されるケースが多く見られます。
もしこれらのテーマに投資したい場合は、目論見書や運用報告書を参考にして個別株式で投資する方法を検討する方が合理的でしょう。
⑤損失限定型ファンド(10:34)
損失限定型ファンドは、一定の基準価格の下値ラインを設定し、それを下回った場合に繰上償還することが予め決められているファンドです。購入手数料も発生するため、コスト面でも不利な商品といえます。
2020年のコロナ禍前後に多く販売されましたが、長期投資の観点から見ると適さない商品です。長期投資において損切りは基本的に不要であり、資産全体でのリスク分散を重視するアセットアロケーション運用とは相反する考え方に基づいています。
長期投資では個別の商品の値動きではなく、ポートフォリオ全体での資産成長を目指すため、損失限定型ファンドの仕組みは長期投資家には適していません。
繰上償還されやすい属性(14:14)
ファンドの種類に関係なく、以下の属性を持つファンドは繰上償還のリスクが高いため避けることをおすすめします。
まずは信託期間が有期のファンドです。コモディティファンドなどに見られる信託期間が有限のファンドは、長期投資には適していません。数十年保有したい投資家にとって、強制的に現金化されて再投資が必要になることは大きなデメリットです。NISA口座では保有し続ける限り非課税のメリットを享受できるため、繰上償還はこの恩恵を失うことを意味します。
次に純資産総額が100億円以下のファンドです。ファミリーファンド方式のベビーファンドであっても、純資産総額が100億円を下回るファンドは危険性が高まります。アセットクラスが限定的な債券ファンドやREITファンドでも、最低50億円程度は確保したいところです。
また純資産が長期的に流出しているファンドもリスクがあります。口数ベースで30億口を下回ると、早期償還の可能性が高まります。このようなギリギリの状態にあるファンドは最初から選択しない方が賢明です。
最後は相対的に経費率の高いファンドです。 同じカテゴリのインデックスファンドの中でも経費率が高いものは人気がなく、資金流出により他のファンドに乗り換えられる傾向があります。
今回の法令改正により、こうしたファンドは早期償還の対象となりやすくなるでしょう。
まとめ(17:01)
金融庁の法令改正により、投資信託の繰上償還がより容易になることが予想されます。長期投資を前提とするNISA口座での運用においては、繰上償還は純粋にデメリットでしかありません。
2024年から始まった新NISA制度により、投資初心者にとって証券会社選びや金融商品選びの重要性がさらに高まっています。今回紹介した5つの投資信託の特徴と繰上償還されやすい属性を理解し、適切なファンド選択を行うことが長期的な資産形成の成功につながるでしょう。
投資信託選びにおいては、人気があり、規模が大きく、経費率が低いインデックスファンドを中心に検討することが、繰上償還リスクを回避する最も確実な方法といえるでしょう。
またこちらの動画「【最新データ検証】9割のアクティブファンドはインデックスに負けるって本当?」では、アクティブファンドがインデックスに勝てない理由についてデータを交えて詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。