プラチナNISAに新機能?制度改正の狙いとは
新たなNISA制度案として浮上した「プラチナNISA」。65歳以上の高齢者を対象に毎月分配型投資信託の購入をNISA枠で可能にするというこの提案は単なる制度の追加ではなくNISA制度そのものの構造に大きな改革の兆しを感じさせるものです。
注目したいのが「スイッチング」機能の導入という観点です。今回はプラチナNISAの背景とその制度設計に潜む意図について詳しく解説していきます。
キーポイント
プラチナNISAとは何か?(00:01:05)
そもそもプラチナNISAとは2025年度の税制改正要望の中で新たに提案された制度案で65歳以上の高齢者を対象にこれまでNISA枠では購入できなかった「毎月分配型投資信託」の解禁を目指すものです。この制度案は資産運用立国議員連盟という政治的団体から打ち出されたものでその中心人物には「NISAの生みの親」として知られる岸田文雄氏が名を連ねています。
提案の表向きは「高齢者のための新しい選択肢」とされていますがマネーセンスカレッジではこの制度に対し非常に批判的な立場を取っています。というのも毎月分配型投資信託は長期的な資産形成には不向きな商品でありむしろ金融リテラシーの低さにつけ込んだ「売りやすさ重視」の商品と捉えられているからです。
具体的には純資産ランキングで第3位に入っている「米国成長株投資信託Dコース(毎月分配型)」が挙げられます。このファンドは純資産総額が2兆8145億円にのぼる巨大ファンドでS&P500やオール・カントリー(オルカン)に次ぐ人気を誇りますがその中身は極めて高コストで購入手数料が3.3%、信託報酬は1.727%にも及びます。
今の時代、インデックス型の信託報酬が0.1%台に突入している中、1.7%以上という数値はもはや時代遅れといえるでしょう。それにも関わらず毎月の配当という“安心感”に魅かれて多くの高齢者が投資しているのが実情です。
毎月分配型投資信託は不要(00:03:50)
そんなプラチナNISAですが明確に「不要」と断じることができます。その理由は毎月分配型ファンドが投資家にとって不利な商品であるからです。
この種の投資信託は毎月一定の配当が出るよう設計されていますが配当の原資が運用益ではなく元本である場合も多く長期的に見れば資産が目減りするリスクが高い商品です。
どうしても毎月分配型が欲しい場合は自分で毎月解約することをおすすめします。SBI証券や楽天証券には定期売却サービスが存在するためそれを活用するとよいでしょう。
しかしこうした商品が人気ランキング上位にあるのは金融機関の対面営業によって情報弱者が誘導されている結果であると考えられます。つまり制度として毎月分配型を正当化することは日本の金融教育の後退を意味するとも言えるのです。
「スイッチング機能」導入か?(00:08:50)
その一方で気になるのが「スイッチング機能」の導入の可能性です。これはある投資信託を売却しその資金で別の商品に乗り換える際に非課税枠を消費しないという仕組みで確定拠出年金(iDeCoや企業型DC)ではすでに導入されています。
現行のNISA制度では投資信託を一度売却して別の商品を購入するとその都度非課税枠を使ってしまいます。このため戦略的な商品の入れ替えがしにくく柔軟な資産運用ができないという不便さが指摘されていました。
ところがプラチナNISAに関する一部の報道において「既存の資産を入れ替える」ことが前提とされている記述が確認されています。これが事実であれば非課税枠を温存したまま商品を入れ替える“スイッチング機能”が導入される可能性があるといえるでしょう。
これが実現すればNISA制度は単なる「枠内投資」の場から「長期的な戦略的運用」を可能にするプラットフォームへと進化します。まさに「神改正」とも言える制度変革の第一歩となるかもしれません。
英国ISAとの違いから見えるNISA制度の限界(00:13:35)
日本のNISA制度は英国のISAをモデルに導入されたものですが実際には大きな運用上の違いがあります。英国ISAでは資金を一度ISA口座に入れるとその中での資産の売買や乗り換えが自由にでき非課税枠が消費されることはありません。
一方、日本のNISAは「商品ベース」で枠が管理されており売って買い直すたびに枠が消費されてしまいます。この違いは資産運用の柔軟性という点で大きなハンディキャップとなっています。これは大きな不便であり「せっかく非課税なのに使いにくい」という声が根強くあるのも当然です。
日本のNISA制度が「回転売買を防ぐ」という名目でこのような制限を設けていると考えられますがその結果として制度が硬直化し戦略的な運用を阻んでいる現状があります。
まとめ
プラチナNISA導入の背後には「スイッチング機能」という大きな可能性が隠されています。この機能がNISAに取り入れられれば非課税枠を柔軟に活用できるようになり戦略的な資産運用が可能になるでしょう。まさに「神改正」と言える変化です。
同時に毎月分配型投資信託を制度に取り込むことで投資初心者や高齢者が不利な商品を掴まされるリスクが懸念されます。私たちにできることはこうした制度の本質を見抜き自分にとって最適な資産運用を選択する知識と判断力を磨くことです。プラチナNISAをきっかけにNISA制度の柔軟性と利便性が進化することを期待するとともに、正しい情報をもとに賢い投資をしていきましょう。
またこちらの動画「【9割の人には関係ない】新NISA 1,800万円を埋めるべき?のよくある勘違いを解説」では新NISAを活用したい方にとって役立つ情報を公開していますのでぜひご覧ください。