企業型確定拠出年金に加入すると「マッチング拠出」や「選択制DC」という仕組みを会社が採用していることがあります。初めて企業型確定拠出年金を利用する場合、通常の拠出方法とどのように違うのかわからないですよね。
そこで本記事では、企業型確定拠出年金のみで利用できる「マッチング拠出」と「選択制DC」の2つの拠出方法について解説します。拠出方法によってあなたの拠出できる金額が変わる可能性があるので、仕組みをきちんと理解していきましょう。
企業型確定拠出年金とは
企業型確定拠出年金(以下、企業型DCと呼ぶ)は、企業が社員の福利厚生として導入する年金制度です。導入した場合は原則全従業員が自動的に加入するようになります。
企業型DCの特徴は「企業」が掛金を拠出し、金融商品の選定や運用は「従業員(加入者)」が実施する点です。iDeCoと違い、手数料も企業が負担することになります。
企業型DCで拠出できる金額(拠出限度額)は「確定給付年金(DB)」を利用しているかどうかで変わります。
- 確定給付年金(DB)なし:最大5.5万円(年額66万円)
- 確定給付年金(DB)あり:最大2.75万円(年額33万円)
たとえば、DBと企業型DCの2つを利用している場合、企業型DCの拠出限度額は最大2.75万円になるということです。
ただし、拠出可能額(掛金)は企業が定めるDC規約によります。拠出限度額が最大2.75万円だとしても、DC規約に「掛金は1万円まで」と定められている場合は、原則1万円までしか拠出できません。
企業が設定した掛金が低額だと、加入者によってはさらに拠出したいと考える方もいるでしょう。毎月1万円を年利回り5%で30年間運用した場合、約830万円ほどにしかなりません。1万円ほどの積立投資をしても老後資金としては不十分だと考える方は少なくないと思います。
このような場合にさらに掛金をプラスして拠出できる方法として「企業型DCとiDeCoの併用」があります。企業型DCに加入しながらiDeCoにも加入するというイメージですね。
併用すると企業型DCの事業主掛金から余った金額を規定の範囲内(DBあり:最大2万円、DBなし:最大1.2万円)でiDeCoから拠出できます。
たとえば、企業型DCのみを導入していて企業が定めた掛金額が1万円だとしましょう。この場合にiDeCoを併用すると最大2万円まで掛金をプラスして拠出できます。
つまり、企業型DCで1万円とiDeCoで2万円の合計3万円を拠出できるようになります。
企業型DCとiDeCoを併用することで、老後資金を貯めるために必要な掛金を拠出できるようになります。
企業型DCの制度内容を詳しく知りたい方は「確定拠出年金の個人型(iDeCo)と企業型(企業型DC)の違い」をご参照ください。iDeCoと併せて違いやメリットなどをわかりやすく解説しています。
企業型確定拠出年金だけで使える「マッチング拠出」
前述したように企業型DCでは会社が掛金額を設定します。その際に掛金が低い場合はiDeCoを併用して掛金をプラスすることが可能です。
ただ、iDeCo以外に掛金を増やせる仕組みがあります。それが「マッチング拠出」というものです。本項では、マッチング拠出の制度内容とiDeCoとどちらを利用すべきか解説します。
事業主掛金と同じ額まで掛金をプラスできる仕組み
マッチング拠出は、企業が拠出する掛金(事業主掛金)に加入者(従業員)本人が掛金をプラスして拠出できる仕組みです。家計に余裕がある場合や掛金額が極端に少ない場合などに利用することで、拠出金額を増やすことができます。
ただし、企業の掛金累計を超えて拠出することはできず、かつ事業主掛金と加入者掛金の合計額は拠出限度額(5.5万円もしくは2.75万円)を超えてはいけません。
たとえば、企業が設定している掛金が毎月1万円の場合、加入者が拠出できる掛金は毎月1万円までです。
もし企業が設定している掛金が毎月3万円までであれば、加入者が拠出できる掛金は2.5万円(拠出限度額5.5万円の場合)となります。
マッチング拠出とiDeCoはどっちを使うべき?
企業型DC加入者が掛金額を増やしたい場合、「マッチング拠出」もしくは前項で述べた「企業型DCとiDeCoの併用」のどちらかを利用することになります。
実はマッチング拠出を利用した場合、企業型DCとiDeCoの併用はできません。反対に企業型DCとiDeCoを併用するとマッチング拠出は利用できなくなります。
したがってどちらか片方を選ぶことになるのですが、手数料面からは「マッチング拠出」が有利です。
確定拠出年金では口座の維持・管理や移管・開設時に手数料がかかります。この手数料は企業型DCは会社が負担してくれますが、iDeCoでは個人で負担しなければなりません。
そのため、手数料のことを考えると「マッチング拠出」がより多く掛金を拠出できます。
ただし、企業型DCの事業主掛金によっては拠出金額面でiDeCoのほうが有利になる場合があるので注意が必要です。
iDeCoが有利となるケースは以下の2通りです。
- 事業主掛金が2万円未満(DBなしの場合)
- 事業主掛金が1.2万円未満(DBありの場合)
DB(確定給付企業年金)などを利用していない場合は事業主掛金が2万円未満であればiDeCoが有利になります。
DBを利用している場合は、事業主掛金が1.2万円未満になるとiDeCoのほうが掛金をより多く拠出できます。
たとえば、DBに加入しておらず企業型DCを導入している場合、制度上の拠出限度額は5.5万円です。
企業型DCの事業主掛金が1.5万円までであれば、マッチング拠出でプラスできる掛金は最大1.5万円になります。つまり、企業型DC+マッチング拠出では最大3万円までしか拠出できず、残りの2.5万円の枠は使えないままになってしまいます。
一方でiDeCoであれば2万円まで拠出できるため、最大3.5万円(1.5万円+2万円)まで掛金を増やせます。したがって、企業型DC+マッチング拠出より企業型DC+iDeCoのほうが掛金を多く拠出できます。
しかし、企業型DCの掛金が2.5万円であればマッチング拠出では2.5万円まで拠出可能です。企業型DC+マッチング拠出で合計5万円を拠出できることになり、企業型DC+iDeCoよりも掛金を多く拠出できるようになります。
このようにiDeCoが有利となる場合があるため、掛金をプラスしたい場合は企業型DCの事業主掛金で判断しましょう。
企業型DCで購入できる金融商品もチェックしておこう
ただし、企業型DCで購入できる金融商品の種類も重要な判断要素になります。
企業型DCで利用する金融機関は会社が定めるため、指定された金融機関によっては自分が欲しい金融商品がない場合があります。もしくは信託報酬手数料が高い商品しかない場合もあるでしょう。
このように金融商品のラインナップが悪い場合は、たとえ事業主掛金が2万円(もしくは1.2万円)を超えていても、自分で金融機関と金融商品を選べるiDeCoの併用をおすすめします。
マッチング拠出とiDeCoの選び方は「マッチング拠出とiDeCoは利用するならどちらがいい?」の記事で解説しています。企業型DCでより多く掛金を拠出したい方はぜひこちらの記事もチェックしてください。
企業型確定拠出年金だけで使える「選択制」
企業型DCを導入すると基本的に従業員は強制的に加入することになります。
ただ、確定拠出年金を利用したくない方にとっては、加入するかどうかは自分で判断したいですよね。入社したら勝手に企業型DCに加入させられて、なおかつ拠出可能額が低かったり、欲しい金融商品を買えなかったりすると納得できないでしょう。
このような問題を解消できる制度が、企業型DCだけで利用できる「選択制確定拠出年金」です。
選択制は掛金を拠出するかどうかを従業員が選べる仕組み
選択制確定拠出年金(以下、選択制DCと呼ぶ)は、従業員が掛金を拠出するかしないか、拠出する場合は掛金額を「選択」できる仕組みです。
選択制DCを採用することで、従業員は自分の意思で確定拠出年金を利用するかどうか決められるようになります。
たとえば、利用しない場合は本来拠出するはずだった掛金をそのまま給与や賞与として受け取ることが可能です。利用する場合は毎月の掛金額を自分で設定し、拠出したお金は全額が所得控除の対象になるので節税効果もあります。
基本的に会社が確定拠出年金を導入する理由は、それまであった企業年金などの代替年金として採用します。
従業員の立場で考えると、これまで企業年金などに充てていたお金が減ってしまうのは釈然としないでしょう。そのため、多くの企業では確定拠出年金の導入時に給与の見直しを行います。
生涯設計手当やライフプラン選択金などと再定義して、従来の給与や賞与に数万円プラスしたり、今までの給与のうちの一部を手当としたりします。従業員は再定義された手当分を拠出するか、手取りとしてそのまま受け取るかを選択するということです。
もちろん、手当分以上の金額を拠出限度額以内であれば自分の給与からプラスして拠出することも可能です。ただし、拠出した金額だけ手取り額は減ってしまうので家計とのバランスをみながら掛金を決めることが大切です。
選択制DCの拠出限度額
選択制DCの拠出限度額は、前述した通常の企業型DCと同じです。
- 確定給付年金(DB)あり:最大5.5万円
- 確定給付年金(DB)なし:最大2.75万円
この範囲内で自分自身で掛金を自由に設定できます。
注意点として、選択制DCであっても利用する金融機関を選ぶことはできません。会社が指定する金融機関を使って金融商品を買うことになります。金融商品も用意されているものの中から選ばなければなりません。
選択制DCとiDeCoはどっちがいい?
選択制DCとiDeCoは、選べるのであれば基本的に選択制DCがおすすめです。
iDeCoは給与から受け取ったお金を拠出するため、社会保険料は軽減されません。手数料なども自己負担になります。
一方で選択制DCであれば社会保険料が下がったり、手数料なども企業が負担してくれるメリットがあります。
ただし、マッチング拠出とiDeCoを選ぶ時と同じように自分の投資方法に合う金融商品を購入できることは大切です。
選択制DCで購入できる商品のラインナップがアクティブファンドばかりだったり、アメリカや日本だけしか買えなかったりする場合は、iDeCoに加入したほうが全世界投資を行いやすいです。
優先的に選ぶのは選択制DCにしておき、購入可能な商品のラインナップなどをしっかりと確認してどの制度を活用するか決めてください。
企業型確定拠出年金を最大限活かせる拠出方法を選ぼう
企業型DCは通常の拠出方法に加えて利用できる「マッチング拠出」、加入者が企業型DCで掛金を拠出するかどうか選べる「選択制」があります。
さらに、条件を満たしていれば「iDeCo」と併用することも可能です。
このように掛金額を増やす方法は数種類あるので、企業が設定した掛金額が低かったとしても確定拠出年金を最大限活かせるようになっています。
ぜひ記事を参考に確定拠出年金を利用して老後資金を準備していきましょう。
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