退職金が振り込まれても銀行に行ってはいけない理由

3月になると退職者が増える時期を迎え、それに伴って退職金の扱いが重要なテーマになります。退職金が振り込まれたとき、銀行から案内が届くことがあります。一見お得に見えるその案内には、知らずに足を踏み入れると大きな後悔につながる仕組みが隠されています。

今回はその実態について詳しく解説します。

退職金が振り込まれると(2:06)

退職金が銀行口座に振り込まれると、銀行はすぐにそれを把握します。現在の銀行はAIやマーケティングオートメーションを活用しており、一定の条件を満たした顧客のリストが自動で生成される仕組みになっています。年齢や振込金額からほぼ確実に「退職金の入金」と判断され、その後はDMや電話といった形でアプローチが始まります

「長年のお勤め、ご苦労様でした」といった文面で届く案内には、退職金向けの定期預金や金融商品などが記載されています。銀行の奥にある個室に通され、課長代理クラスの担当者からお茶の接待を受けながら説明を受けることになります。長年働いてきた自分が認められたような気持ちになり、つい心が動いてしまうのは自然なことかもしれません。しかしそこには巧みなセールスの構造があります。

DMの内容(3:53)

銀行から届くDMや案内の中核は、退職金専用の高金利定期預金です。通常よりも優遇された金利が提示されますが、実はそれだけではありません。銀行が本当に狙っているのは、定期預金とセットで投資信託を購入させることです。

典型的な案内の例として、500万円以上の資金のうち半分以上を投資信託に預け入れると、残りの定期預金部分の金利を10%にするというプランがあります。たとえば2,000万円を預ける場合、1,000万円を定期預金、1,000万円を投資信託に充てる形です。3ヶ月だけ10%の金利がつくとなれば、単純計算で25万円が手に入る計算になります。この数字を見ると、多くの方が「お得かもしれない」と感じるのは無理もありません。

しかし冷静に考えると、その金利が適用されるのはわずか3ヶ月のみです。4ヶ月目以降は通常の定期預金金利に戻ります。目先の金利の大きさだけを見て「いいな」と思い話を聞きに行くと、奥に通されいろんな説明や勧誘を受けます。

なぜ銀行は「今」退職金を狙うのか(10:14)

銀行がこれほど積極的に退職金を集めようとしている背景には、金融環境の変化があります。日本では長らく低金利が続いていましたが、日銀の政策金利が引き上げられ始め、1%を目指す流れになっています。金利が上昇すれば、銀行は預金を元手に貸し出しを行うことで利ざやを稼ぎやすくなります。本業である貸出業務で収益を得るためには、手元に十分な預金残高が必要ですそのため、まとまった資金が一度に振り込まれる退職金は、銀行にとって格好の預金獲得機会となっています

マネーリテラシーがない方だとしてもインフレがキツくお金が目減りしていくことは薄々分かっているため金利の高いところに預けたいと思います。特に投資の仕方を知らない人にとっては金利しかないため、そこで特別なプランを提示されるとやっておこうと思ってしまうのでしょう。

銀行で勧められやすい商品としては、投資信託の販売手数料がある商品、特に「毎月分配型投資信託」が挙げられます。毎月分配金が受け取れるという仕組みが退職後の生活に合うように思えますが、実際には運用益ではなく元本から分配金を支払っているケースも多く、5年後に資産が半分になっていたというケースも珍しくありません。毎月分配型投資信託がNISA口座の対象から外されているのも、金融庁が投資家にとって不利な商品であると判断しているからです。

銀行の窓口で購入する投資信託には、販売手数料がかかります。金融庁のデータによると、ネット系証券会社の販売手数料は0.05%程度であるのに対し、主要都市銀行では0.9%前後、地方銀行では1.5%前後、大手証券会社の窓口では2%前後にのぼることもあります。100万円を投資信託に充てると、それだけで2万円が手数料として引かれ、スタートの時点ですでに元本割れをしている状態になります。

加えて、信託報酬と呼ばれる保有中にかかる手数料も見逃せません。ネットで購入できるeMAXIS Slimシリーズのような低コスト商品と比べて、窓口販売の商品は年間0.5%程度高く設定されていることもあります。この差は1年では小さく見えても、10年・20年と長期で保有すれば大きな差となって積み重なります。

まとめ(23:26)

退職金を受け取る前に準備しておくべきことは、まず自分自身の退職金の金額を把握することです。実際には8割以上の方が、退職金として受け取れる金額を事前に把握できていないと言われています。金額を知らないまま退職を迎えると、お金が振り込まれた直後にセールスを受け、冷静な判断がしにくい状態に陥ります。

大切なのは、老後の資産設計を先に立てることです。年金がいくら受け取れるのか、毎月の支出に対して何が足りないのかを整理し、退職金・NISA・企業年金・保険などをどう組み合わせて使っていくかの計画を、退職金が入ってくる前から考えておくことが重要です。

銀行から提案される高金利プランに心が動いたとしても、その場で決断する必要はありません。一度持ち帰り、パートナーや家族と相談する時間を取ることが大切です。投資信託を購入するのであれば、販売手数料が無料(ノーロード)で信託報酬の低い商品を、ネット証券で購入することが選択肢として有力です。退職後の大切な資産を守るために、焦らず・比べて・学ぶ姿勢が求められます。

またこちらの動画「個人向け国債はどれを選んだらいい?変動10年・固定5年・固定3年」では、変動10年・固定5年・固定3年を使う時期で選ぶコツを解説していますのでぜひご覧ください。

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