「お金で幸せは買えない」は嘘だった?ハーバード大が教える”幸せになるお金の使い方”

「お金で幸せは買えない」とよく言われますが、実際には買える部分もあるのではないでしょうか。お金と幸せの関係について、興味深い研究結果があります。

通常は投資方法やファイナンシャルプランについて解説していますが、今回は感情やマインド系の話題を取り上げます。実はこうした心理的な側面こそが、最も重要なのではないかと考えています。

経済学の世界では長い間、経済的合理性が重視されてきました。しかし、ダニエル・カーネマン氏などによって行動経済学という分野が発展し、人の心理や感情と経済行動の関係性が注目されるようになりました。当初は異端とされていましたが、現在では政策にも応用されるほど研究が進んでおり、カーネマン氏はノーベル経済学賞も受賞しています。

「幸せ」と年収には正の相関関係がある(1:54)

出典:Daniel Kahneman and Angus Deaton,”High income improves evaluation of life but not emotional well-being”

カーネマン氏とアンガス・ディートン氏による共同研究では、45万件もの膨大なデータを分析し、幸せと年収には正の相関関係があることが発表されました。つまり、収入が増えれば幸せも増えるということです。

ただし例外があります。年収7万5000ドルまでは、収入が増えるほど感情的幸福度が上がりますが、それ以上になると頭打ちになるというのです。この調査が行われた2010年当時、アメリカの平均年収は約6万7000ドルでした。7万5000ドルは当時の為替レートで約700万円、現在の日本の年収に換算すると約820万円に相当します。つまり、平均よりもやや上の収入になると頭打ちが来るということです。

しかし、この発表以降も研究は続いています。約10年後、キリングスワース氏が「7万5000ドルを超えても幸福度は増えていく」という正反対の研究結果を発表しました。そしてさらに2年後、カーネマン氏とキリングスワース氏が共同研究を行い、興味深い結論に達しました。確かに7万5000ドルを超えても幸福度は上がるものの、その中身には違いがあるというのです。

普段から幸せを感じづらい人と、既に毎日がハッピーだという人では、収入が上がった時の反応が異なります。幸せを感じづらい人は年収が上がっても頭打ちが早く来やすい一方、普段から幸せを感じて噛みしめている人は、年収が上がるとずっと幸せも上がり続けます。つまり、この2023年の研究から言えることは、他人のことを批判せずに幸せに生きることが大切だということです。

お金というものは、自分一人では生きていけないからこそ存在し、その交換価値によっていろんな人の力を借りながら人生が進んでいきます。他人を批判するよりも、自分自身が助けられたことに対する感謝や、それによって生活が向上したこと、周りの人たちを幸せにできたことなど、そういった具体的なことを日頃から感じている人の方が、お金との付き合い方もうまくいっているのではないでしょうか。

“幸せになるお金の使い方”8つの原則(6:32)

ハーバード大学では「お金で幸せは買えない」という考えに対して、「買えないのではなく、買い方が下手なだけだ。買い方を変えれば幸せになれる」という論文を発表しています。この論文では8つの原則が示されており、順番に解説していきます。

1つ目は「ものではなく経験を買いなさい」というものです。旅行やイベント、食事など、記憶に残りやすいものの方が、所有欲を満たすものよりも幸福感が長続きします。例えば車を買う場合、かっこいい車で所有欲を満たすよりも、その車で家族と旅行した記憶や、彼女とドライブした経験の方が価値があるということです。

2つ目は「自分のためではなく他人のために使いなさい」というものです。自分の買い物はそこそこの調査で済ませても、プレゼントや会社のための買い物となると徹底的に調べるという経験は誰にでもあるのではないでしょうか。人の幸せが自分の幸せだと感じられる人、人が喜ぶことに喜びを感じられる人は、幸せを感じやすいと言えるでしょう。

3つ目は「少数の大きな喜びより多数の小さな喜びを買いなさい」というものです。豪華な一点物を買うよりも、カフェに行ったり、マッサージを受けたり、家族と食事をしたりといった、金額が少なくても複数回の楽しみの方が幸福感を感じやすいということです。大きな喜びは高額になりがちで頭打ちも来やすいですが、小さな幸せを日頃からずっと感じ続けることが大切なのです。

4つ目は「延長保証など過剰な保険を避けなさい」というものです。保険に入りたいというのは、結局不安の裏返しです。しかし、保険事故が起きた時のアクシデントは100%自分が受けるもので、金銭的な保証がされるだけです。人は悪い出来事で苦しみを得る時、それを過大評価する傾向があります。悪いことばかり見ていれば、幸せにはつながりません。日本人はネガティブ思考で危険を回避したいという意識が強い民族だと言われていますが、それを上回る良いことや、良い人生にしていこうという気持ちが大切です。

5つ目は「今支払って消費は後にしなさい」というものです。例えばオールインクルーシブのクルージングなどが良い例です。支払いは先に済ませているのに、後になって消費する時にはほとんど無料に感じられ、すごいお得感や幸せ感を感じられるのです。

逆に最悪なのが、支払いを後回しにして今消費するパターン、つまりローンです。ローンで払うことを前提とすること自体が間違いなのです。一生分の買い物となる住宅を除き、基本的にローンはアウトです。例えば車について言えば、50万円ですごく乗れる車はゴロゴロありますし、100万円くらいで10年乗り潰せる車も売られています。お金がないのにローンを組んで300万円や600万円もする車を買うのは身の丈に合っていません。先払いして後でワクワクする方が、幸福度が高まるのです。

6つ目は「幸せに影響する要因に集中しなさい」というものです。人々は多くの場合、お金を使う時にそのお金を使う先が本当に自分自身の幸せかどうかを考えません今の感情のまま使ってしまった時、その後どう感じるかというと、大体ドーンと落ちてしまいます

物や自分自身の見栄などにお金を使っていった時、本当に大事なものは何でしょうか。多くの場合、健康や人間関係、家族、恋人といった繋がりが重要です。死ぬ間際に思い出されるのは、お金をいっぱい使ったことや豪華な生活ができたことではなく、人間関係のことです。物質的な所有は一時的な満足しか与えません。本当に自分が幸せに感じるものは何なのか、それを知った人間は強いです。そのことについて考えて理解できたものに集中することが大切なのです。

7つ目は「比較のしすぎに注意しなさい」というものです。比較すること自体は大事ですが、スペック比較にこだわりすぎたり、他人と比較したりすると、実際の満足度や幸せに関係ない情報で満たされてしまいます。適度にしておくことが大切です。

8つ目は「自分の頭ではなく周りに従いなさい」というものです。自分自身の判断があまりうまくいかない時、すでにその買い物をした人や、その経験則をちゃんと調べた上で参考にした方が失敗は少ないということです。ほとんどの場合、自分がやりたいなと思うこと、気になることは、まず最初にやった人がいます。自分自身の頭の中だけで考えていくと経験則が得られないため、同じ体験をした人の意見や体験を聞くべきです。自分自身の判断を時には疑い、同じ体験をしている人の満足度を聞いた方が失敗しにくいのです。

まとめ(19:25)

お金を稼いでも幸せには頭打ちが来るというデータは確かにあります。しかし、その頭打ちが来るか来ないかは、お金の使い方や幸せの感じ方で決まるのです。日頃から幸せを感じやすい人は、それなりに幸せが継続します。

幸福論でも書かれていますが、人は幸せだから笑うのではなく、笑うから幸せを感じられるのです。幸せは人それぞれで、個人差もあり、誰かが決めるようなものでもありません。他人の批判や揚げ足を取るといったことに心を奪われるのではなく、自分自身の周りのことや周りの幸せを感じると、自然と自分自身も幸せに感じるのではないでしょうか。

自分にとって何が幸せなのか、自分の幸せを感じるお金の使い方とは何なのだろうということを、たまには考えてみるのも良いかもしれません。

またこちらの動画「借金してもいい3つのパターン」では、借金してもよいケースと判断基準を3つの視点で解説していますのでぜひご覧ください。

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