【選挙前に✅】「年金ドロボー」のジャパンファンド構想の致命的な欠陥
衆議院選挙を控えて注目を集めている「ジャパンファンド」構想について、年金泥棒といった批判も出ています。
感情論を一旦横に置いて、この構想が本当に良いものなのかどうか、冷静に解説していきます。
ジャパン・ファンド構想まとめ(0:42)
ジャパンファンド構想は、約500兆円規模の資産を戦略的に運用し、リターンを最大化しようとするものです。その運用益を社会保障費や国家運営に分配する仕組みで、残った運用益の約2%、つまり10兆円規模を活用する計画です。その半分を使うだけでも5兆円程度の財源が確保でき、食品の軽減税率8%をゼロにすることや、現役世代の社会保険料を年間7万円程度減らすことも可能とされています。
運用実績としては、GPIFが採用しているアセットアロケーション運用があり、2001年からの運用開始以来、年率4.51%の実績があります。このノウハウを他の資産にも活用できないかという提案です。
500兆円の内訳は、GPIFに250兆円、外為特会に約200兆円、日銀が保有するETFが約85兆円で、合計すると現時点で530兆円程度になります。アセットバランスを4資産均等配分にすると5%を超える運用利回りが期待でき、25兆円程度の運用益が見込めるという計算です。
ソブリン・ウェルス・ファンドとは(3:44)
ジャパンファンドは一般的にソブリン・ウェルス・ファンド、つまり政府系ファンドと呼ばれるものです。2026年1月末現在のランキングでは、1位がノルウェー、2位と3位が中国、4位がアブダビと続き、これらのファンドの多くが石油資源を原資としています。中国とシンガポールは外貨準備金を活用しており、トルコは国営企業の株式や資産を移管して運用しているため特殊なケースです。
ノルウェーの政府年金基金は「年金」という名前がついていますが、実は年金保険料を積み立てたものではなく、政府が持つ石油利権から得た収益を積み立てており、GPIFとは資金の出どころが異なります。
運用先としては、ほとんどのファンドが世界分散投資を採用しています。これはデファクトスタンダードと言える世界的な運用方法です。中国やサウジアラビア、トルコは国内比率が高い特殊なケースで、中国は国家戦略として国内比率と金保有率を高く維持しています。
規模としては、ノルウェーと中国がそれぞれ300兆円を超える巨額のファンドを運用しています。基本的にソブリン・ウェルス・ファンドは、石油などの資源を原資としており、その資源がいずれ枯渇することを見据えて将来につなげていく戦略です。外貨準備金を運用しているケースもあるため、構想自体が完全におかしいとは言えませんが、GPIFの資産を組み入れるという点は大きな問題を含んでいます。
年金積立金の運用益は誰のもの?(10:13)
年金積立金の運用益を有効活用しようというのが構想の発端ですが、そもそも年金積立金の運用益は誰のものでしょうか。これが「年金泥棒」と批判される理由です。
財政検証では、すでに運用益が織り込まれています。2024年の最新版では複数のケースが試算されており、かなり高い利回り設定がなされています。運用益が上がれば社会保障費の軽減につながることは既に計画に含まれているのです。
さらに重要なのは、年金積立金の運用は法令で定められているという点です。厚生年金保険法第79条には、「積立金の運用は、もっぱら厚生年金保険の被保険者の利益のために、長期的な観点から安全かつ効率的に行う」と明記されています。「もっぱら」というのは「全て」という意味であり、他への流用は禁止されています。ジャパンファンド構想を実現するには、この法律を改正する必要がありますが、国会での合意を得るのは非常に困難でしょう。
運用は非効率的なのか(12:44)
構想への批判の一つに、運用が非効率だという主張があります。公明党関係者がX(旧Twitter)で示した資料によると、GPIFは4.51%、外為特会は2.36%、日銀ETFは1.98%という運用実績が示されていました。
しかし、これらは同じ基準で比較できる数字ではありません。GPIFの4.51%はトータルリターンで、配当や利金、値上がり益すべてを含んでいます。一方、外為特会や日銀ETFの数字は、おそらくインカムゲイン(配当収入)のみを見ており、トータルリターンではありません。
トータルリターンで比較すれば、数字はほぼ同等になるはずです。日銀が保有する日本株式ETFは最近かなり上昇していますし、外為特会のドル建て資産も円安で大きく値上がりしています。80円台で購入したドル資産が倍近くになっているケースもあるため、2.36%という数字はあり得ません。資産の詳細を明らかにする必要があり、都合の良い数字だけを並べて誘導しているような印象を受けます。
外為特会の大部分を占める米国債をどうする?(15:10)
GPIFは世界分散投資されているため問題ありませんが、外為特会はほぼ100%に近い割合が米国債で運用されていると見られます。アセットアロケーション運用をするには、この米国債を売却する必要があります。約200兆円のうち150兆円は売却して、日本国債、日本株式、海外株式を購入しなければなりません。これはアメリカの理解を得られるでしょうか。
構想を牽引する伊佐氏は、市場規模から見れば微々たるものなのでゆっくり売却すれば問題ないと言っていますが、これは世界経済を理解していない素人的な発言です。問題は、ポジションを変えるという政治的・経済的なメッセージです。日本の外貨準備の方針として米国債から株式運用も含めた分散投資に転換するということは、米国から距離を置くという姿勢を世界に表明することになります。
これは政治経済的に非常に大きな転換点であり、世界経済市場、特に為替市場への影響は計り知れません。「日本はアメリカから離れるのか」「日米同盟はなくなるのか」といった印象を与えかねず、「微々たるもの」という主張は暴論と言わざるを得ません。
日銀ETFを組み入れられるのか(17:14)
日銀ETFは、そもそも早期に売却すべき資産として批判されてきました。日銀が保有したくて保有したものではなく、やむを得ず保有することになったもので、早期に解消すべきだというのが一般的な見方です。
ノルウェーの政府年金基金は膨大な金額のため多くの企業の大株主になっており、これ自体が問題視されています。日本でもETF保有に対する批判があり、政府系機関が大株主になることは問題があります。さらに、日銀ETFは日銀のバランスシートに入っているため、単純に移管すると日銀のバランスシートが急激に悪化します。
約85兆円のETFのうち、80兆円程度が日本株式だとすると、アセットアロケーション運用に組み入れるには60兆円を売却する必要があります。日銀ETFの売却には100年かかると言われており、その4分の3となると75年かかる計算です。GPIFの運用ノウハウを使うなら4分割にせざるを得ませんが、どのように組み込むのでしょうか。
さらに、運用で得た利益は通常再投資されますが、5兆円を使うとなれば売却が必要です。国民の老後資金を運用するだけでも複雑な問題なのに、それを国家予算として今すぐ使わなければならないとなると、さらに困難さが増します。
これだけ巨額の資産を売却するには、大きなマーケットインパクトがあります。日銀は売却スケジュールを公表しましたが、それを公表することで、ヘッジファンドが先回りして売りから入り、安く抑えたところで日銀に売らせてから買い戻すという戦略が可能になります。
調達コストがないというのは幻想(21:43)
維新の会や公明党は、このファンドの原資はすでに金融資産として保有しているため調達コストはゼロだと主張していますが、これはマクロ経済学を全く理解していない主張です。政府系ファンドにする以上、財政健全化との関係を切り離すことは不可能で、マクロ経済学の基本概念から言えば、長期国債利回りが調達コストになることは自明です。
ジャパンファンドで運用益を上げて国内に使うということは、政府が資金を使うということです。すでに運用されている資産の裏付けとして、政府の債務残高があります。政府の役割として、民間だけに任せるのではなく、政府自身が国内外に投資して先行投資し、将来の日本の国力を増大させる機能もあります。
債務残高を増やさないためには、名目GDP成長率は常に長期国債利回りを上回らなければなりません。この不等式を満たさなければ、債務は増え続けます。現在の長期国債利回りは2.3%から2.5%程度ですから、それ以上の利回りでなければ使えるお金にはなりません。それ以上使ってしまうと債務が増えてしまうという構図なのです。
公明党は与党として財政健全化を目指してきた政党なのに、この主張は手のひら返しと言わざるを得ません。長期国債利回りを超える2%の利回りを常に出し続けることは至難の業で、それを毎年使うような社会保障費に転用できるほどのノウハウがあるかも疑問です。
利権の温床になる(25:58)
最後の懸念は、利権の温床になるという点です。当然、新しい組織を作ることになります。そもそも一つにまとめる必要すらなく、中国は二つに分けていますし、ノルウェーも実際には二つに分かれています。
GPIF自体は年金以外に利用できない資産なので置いておくとして、外為特会と日銀ETFの二つだけで考えれば約280兆円です。これを運用するとしても、利権は当然絡んできます。
元民主党や公明党の主張には、政治的な意図を強く感じます。アメリカの国債を4分の3売却し、日本の株式も売却して、世界で運用するという聞こえの良い話ですが、実質的には日本からアメリカを切り離し、日本株式を売却するということです。その世界の運用先に新興国を含めるとなれば、当然中国も入ってきます。維新の会と公明党は中国と非常に近い関係にあるため、中国の意向を受けてやっているのではないかと疑わざるを得ません。
外為特会はすでに一般会計に入る方法があり、実際にやっています。年金積立金もすでにその機能があります。唯一ないのは日銀ETFですが、これは売却していく方針に立っているはずです。それを聞こえの良いものにして、しかも運用益のうち250兆円分はすでに利用先が決まっています。日銀ETFも本来は売却したいはずなのに、それを保有して運用するというのは矛盾しています。
可能性としてはゼロではありません。中国もやっていますし、シンガポールも外貨準備金の運用を変えています。これを見ると、政府の政治方針が国家運営にかなりの影響を与えることが分かります。外貨準備の方向性を変えるということは重大な決断であり、為替市場から見れば小さいから問題ないという姿勢を持つ人にこれを任せるのは、非常に危険だと考えます。
まとめ(29:43)
ソブリン・ウェルス・ファンドに日本も参加するという構想自体は、聞こえは良いかもしれません。しかし、使っているものは石油利権か外貨です。外貨準備として米国債で運用している背景には、米国との日米安保や日米同盟があります。それを離れていくという戦略に立つのか、それを実行するということは国家運営自体を変えてしまうことになります。
中国の軍拡や台湾問題といった課題に直結していく問題であり、国民にとって非常に良いように聞こえますが、結局、国家運営の方向性を中国寄りにするのかアメリカ寄りにするのか、かなり大きな影響を与えてしまいます。立憲民主党や維新の会の支持者は、アメリカから距離を置いて日本の軍事力を低く抑え、中国と仲良くしていこうという路線なので、この方向性には賛同されるかもしれません。
しかし、消費税が減税できるとか社会保障費が楽になるといった目先の利益に目を奪われて、自分自身の倫理や正義を売ってしまわないように、よく考えていただきたいと思います。個人的には、中国についていくこと自体はご免被りたいと思っています。それならアメリカの方がまだましだと考えています。マフィアとヤクザのどちらを選ぶかという話で、うまく立ち回った方が良いでしょう。
それを変えるということを、単に目先の利益だけで判断するのは問題があると考えます。それぞれに考え方があると思いますので、選挙に対する意思表示も含めて、参考にしていただければと思います。
またこちらの動画「【要注意】S&P500純資産10兆円突破で暴落サイン点灯?米国株に隠された残酷な真実」では、米国株ブームに潜むリスクと分散投資の要点を解説しているのでぜひご覧ください。





