【金利2%超え】「50代からは債券の割合を増やしたほうがいい」は本当か?

最近金利が上昇し、個人向け国債の利回りも高くなってきたことで、よく聞かれる質問があります。それは「年齢が上がるとともに資産に占める債券の割合を増やしたほうがいいのか」というものです。特に日本国債の利回りなどが上がっているため、安全資産として運用できるのではないかと考える方が増えています。

この考え方について、改めて解説していきます。

本当に金利は上がっている?(1:26)

この動画を撮影している1月14日時点で、長期金利が2.18%になっています。12月1日時点では1.8%程度でしたから、0.13%ほど上昇しています。解散の噂などいろいろなリーク情報を受けて金利が上昇しているという状況です。

しかし、なぜ金利が上がっているのかを考えてみましょう。それは、インフレだからです。日銀は2%の継続的なインフレが保たれるかどうかについて「近づきつつある」という表現をしていますが、皆さんの足元の感覚では、インフレは2%以上に感じられているはずです。特に食料品が上がっているため、体感は数字以上です。

それなのにインフレに負けるような金利にシフトしてしまって大丈夫でしょうか。来年には2%の金利はつくかもしれませんが、今100万円あって来年102万円になっても、インフレが3%なら103万円必要です。つまり今の100万円の価値は下がっているのです。インフレに追いついていないのだから、もうちょっと運用しておかなければいけないというのが答えです。

投資方法を変える必要があるのか?(4:23)

年齢が上がるごとにリスク許容度が下がるため投資の方法を変えなければいけないという考え方は、巷でよく言われています。ターゲットイヤー型ファンドなど、それに特化した商品もあり、一般的に浸透しています。

リスクを取ってはいけない人が過度なリスクで投資をするのは避けるべきですが、年齢が上がれば投資してはいけない金額が増えるというのは、資産額にもよります。例えばバフェット氏は遺言書で1割債券、9割株式と指定していました。90歳超えている人が1割の債券比率でいいのかという疑問が生じますが、莫大な資産があるからこそ可能なのです。この一例だけで、年齢だけでは決まらないということが分かります。

結論として、年齢で投資戦略を変える必要はありません全世界の経済成長に乗っかるアセットアロケーション運用をしているのであれば、投資戦略を変える必要はないのです。皆さんの年齢が経済成長に与える影響などありません。世の中は皆さんのことを見て動いていないのです。長期投資は10年後、20年後の話であり、世界は経済成長していくだろうという前提に乗っかればいいという話です。

若い人はリスク許容度が高いから株式投資だけでよく、高齢者はリスク許容度が低いから債券を組み入れるべきだという話があります。高齢者は労働資産がなくなっていくため、リカバリーが効かないので値下がりリスクに備えるべきだという理屈です。一見すると納得できます。

しかし株式と債券の比率について話をしているけれど、その債券にもリスクがあります。インフレ率や信用リスクです。高齢の人はリスク許容度が低いというのは、資産を減らすと何かが破綻してしまうからです。それが人生設計、資産設計なのです。そのプランが破綻してしまうからお金を減らせない、つまり老後暮らしていけなくなるのが怖いということです。

これは投資方法の問題でしょうか。そこをミックスして考えてしまっているから問題が複雑になるのです投資の方法論、投資戦略と資産設計は切り離して考えるべきです。資産設計は資産設計で、そこで運用する方法として投資戦略があります。

リスク許容度について(13:32)

リスク許容度が変わる要素としては、年齢や収入、保有している資産、将来必要とされる支出、資産運用に関する経験、性格などが挙げられます。これは要するにリスク許容度には「個人差」があるということを示しています。決して年齢だけでは決まらないのです。

投資は不確定要素が多く複雑です。それをより複雑化する必要はありません。年齢や収入、資産はファイナンシャルプランの領域であり、欧米では主流の考え方です。それなのに日本では、自分自身の年収や資産、支出について何も考えずに、年齢だけで債券の比率を決めろという話になっています。これは暴論です。

「年齢で変えるべき」論の問題点①年齢だけでは測れない(16:52)

年齢で変えるべきだという主張に対して4つの問題点があります。

1つ目は、リスク許容度は年齢だけでは測れないということですリスク許容度は年齢だけでなく、収入、保有資産、将来必要とされる支出、資産運用に関する経験、性格によっても変わるとされています。一言で言えば個人差があるということです。

リスク許容度は複数の属性によって決まるものであり、個人差があります。若い人でもリスクを取りたくない性格の人もいれば、高齢でもアグレッシブな人もいます。これはリスク許容度ではなくリスク選好度です。リスク許容度はプロがアドバイザー目線で使う言葉であって、個人が考える必要はないのです。

「年齢で変えるべき」論の問題点②債券にシフトする基準が曖昧(20:28)

2つ目は、債券にシフトする基準が曖昧だということです。例えば60歳だから債券を取り入れたほうがいいという意見があるなら、具体的に割合はいくらなのでしょうか

「90マイナス年齢」という目安があります。60歳の方であれば30%が株式投資、70%が債券投資という計算です。しかし年齢だけで決まらない以上、資産額やインフレによっても変わります。その基準が曖昧すぎるのです。大雑把でエビデンスもありません。こんな曖昧な基準は占いと同じで、科学的・理論的な証明は一切示されていません。

「年齢で変えるべき」論の問題点③値下がりリスクに答えられていない(22:24)

3つ目は、値下がりリスクに答えられていないということです。高齢者がリスクを下げたい理由は、資産が減るのが怖いからです。例えば2000万円を運用していて、老後の取り崩し生活に入るとき、この2000万円を減らしたくないため債券に大きく振るという考え方があります。

しかし債券比率を半分にして株式半分、債券半分にしてもリーマンショックのような事態になれば資産全体で25〜30%程度は下がります。なぜ資産が減るのが怖いのでしょうか。理由は老後生活が困るからです。

老後生活でいくら必要かは人それぞれです。年金がいくらもらえるのか、毎月の生活費がいくらなのか、資産がどれくらいあるのかによって変わります。これは結局、どのように取り崩すのかという計画の問題です。その計画が破綻するから減らしたくないのです。

これは投資方法で決まることでしょうか。世界の株価によって老後の生活費が決まるわけではありません。これはファイナンシャルプラン、資産設計の問題です。債券にシフトするかどうかは、投資方法ではなく、自分の生活や資産設計の破綻要因への対策なのです。

「年齢で変えるべき」論の問題点④老後資産は親子2世代で考える視点(25:55)

4つ目は、老後資産は親子2世代で考えるべきだということです親が債券にシフトして資産があっても、それは相続でお子さんに渡ります。つまり親の資産の一部は子供の資産なのです。

子供の視点から見れば、若いのでもっとリスク運用できるかもしれません。一方、親の視点では債券100%、国債2%の利回りで十分と思うかもしれません。どちらが正しいのでしょうか。

これを一貫して考え、親のお金も子供のお金も家族のお金として一族の資産を運用するという考え方があります。ただしこれには前提条件があります。親子間で資産運用に対する知識の共有ができているか、家族仲が良好であるかという点です。

現金化(債券比率)は資産設計で考える(29:36)

結局、現金化するかしないかは資産設計で考えるべきものです。

例を挙げます。60歳でもう働きたくないが年金はもらえないため、60歳から65歳まで何かしらの方法でお金を繋ぎます。毎月30万円使っている家庭なら、年間360万円で5年間なら1800万円必要です。今5000万円あるとすると、5年間で確実に使わなければいけないお金は1800万円です。

この5年間分のお金は安全資産で確保しておいてください。これは資産設計の話であり、投資戦略ではありません。投資戦略はあくまで全世界に満遍なく投資するというものです。投資に向かっているお金は全て同じ運用方法で、全世界の経済成長に乗っかります。個人的な属性には関係ありません。

1800万円は使えないお金として、3200万円だけ投資をします。その3200万円の投資方法は、20歳だろうが60歳だろうが関係なく、全員同じです。世界の経済成長に乗っかればいいのです。これがシンプルな考え方です。

投資してはいけないお金は明確に分かります。今後3年間、怖ければ5年間の中で使うお金に関しては投資に向かってはいけません。これは計算で分かります。先ほど5000万円なら1800万円と3200万円でしたが、1億円なら1800万円と8200万円になります。資産によって比率は変わるのです。

年齢によっても変わります。リタイアが近いから使うお金があるため投資できないのです。若い人でも使うお金が多ければ投資できません。なぜ値下がりリスクが怖いのかといえば、使うからです。使う時期が決まっているなら、お子さんの大学費用も人生の計画に基づいて支出されるため、そのお金は確保しなければいけません。使う金額が分かっているなら、投資に向かえる金額、向かってはいけない金額が明確に分かります。

これは比率ではなく、皆さんの人生に合わせて決まります。現金化や債券比率を上げる下げるというのは資産設計で考えるものであって、投資の方法論や投資戦略で決まるものではないのです。

使うまでの3年前、怖ければ5年前までには投資をしないでください。その間にバッファーがあるので、投資がうまくいかなくて値下がっても取り返せます。積立金額を変えたり、ファイナンシャルプランを調整して延長したり、グレードを下げるなどの対処ができます。5年あれば対処できるため、投資がうまくいかなくても人生が破綻する要因にはなりません。時間的・金銭的な余裕を持つことが大切です。

まとめ(35:08)

ファイナンシャルプランを最初に考えて、その後に投資戦略があります。一番最後に投資の商品や口座が決まります。一番最初に考えなければいけないのはファイナンシャルプランです。難しく感じるかもしれませんが、ざっくりしたものなら簡単に作れます。

今回は多くの質問をいただくとともに、マネーセンスカレッジがなぜこのような活動をしているのかという根幹に関わる内容をお話ししました。ぜひ参考にして、皆さんの人生に役立てていただければと思います。

またこちらの動画「《もらえる年金は減るのか?》老後65歳に必要な貯蓄額は?【年金編】」では、老後資金の必要額と年金の実態を具体的な計算で解説していますのでぜひご覧ください。