「老後1億円」は嘘か真実か?平均値を信じてはいけないこれだけの理由

「老後に必要な資金は1億円」という記事を見かけることがあります。1億円という金額は多くの人にとって憧れの金額であり、資産形成セミナーなどでも「1億円を目指しましょう」というテーマで語られることが少なくありません。楽天証券をはじめとする金融機関でも1億円セミナーが開催されるなど、この金額は一種のキャッチフレーズとして広く使われています。

確かに1億円という数字には根拠があります。しかし、この金額をそのまま鵜呑みにしてよいのでしょうか。今回は老後資金について、もう少し深掘りして考えていきます。

老後資金額を最新データで算出(1:41)

実際に老後にかかるお金を計算してみましょう。家計調査年報の2024年版によると、夫婦無職世帯の消費支出は月額約25万6521円、つまり約26万円となっています。

多くの人は65歳で退職を迎えます。雇用に関しても、企業には65歳までの雇用確保が義務化されているため、65歳からリタイア生活に入る方が多いと考えられます。65歳まで生きた人の平均余命を見ると、約92歳まで生きることが期待されます。

この数字をもとに計算すると、月額26万円×12カ月×27年間で、約8424万円という金額が出てきます。これに多少のプラスアルファを加えると、約1億円という数字が見えてきます。生活レベル一覧表などのデータでも、平均的な生活費は月額26万5000円程度とされており、100歳まで生きると仮定しても1億円強という計算になります。

年金はいくらもらえるかを最新データで計算(4:20)

では、年金収入はどうでしょうか。100歳まで年金を受給した場合、その総額を計算すると、こちらも約1億円になります。年金財政検証のデータをもとに手取り金額で計算し、夫婦2人世帯(DINKs)の場合で見ても、やはり約1億円という金額が出てきます。

つまり、老後の支出としても収入としても、約1億円という数字が出てくるため、「老後資金1億円」という話は完全な誤りではありませんただし、年金で1億円もらえるからといって、老後資金が不要になるわけではないのが現実です。

年金について詳しくない人は、大きく2つの態度に分かれます。1つは年金を全く当てにしたくないという考え方、もう1つは年金はもらえるだろうが金額がわからず、どんどん下がっていくだろうという不安を持つ考え方です。しかし、年金は法律で決まっているものであり、今から試算することも可能です。

問題は、多くの人が自分の収入を正確に把握していないことです。退職の1年前まで退職金の額すら知らないという人もいますし、65歳の人に老後にかかるお金を尋ねても、わからないという答えが返ってくることも少なくありません。

本当に必要なのは「あなた専用のシミュレーション」(6:32)

ここで重要なのは、ニュースやブログ、セミナーで語られている数字は全て「平均」だということです。つまり、これらは「あなた自身の話」ではありません。

本当に知りたいのは「自分の場合はどうなのか」という個別の数字のはずです。そのためには、自分自身で手を動かして計算する必要があります。収入も支出も人それぞれです。お金のかかる趣味がある人もいれば、アクティブに旅行を楽しみたい人もいます。逆に、それほどお金を使わない生活を送る人もいるでしょう。平均値では、このような個人差は反映されません。

さらに、一般的な計算には見えていない支出があります。たとえば、今後増えるであろう医療費や介護費です。政府は医療保険制度を維持するために負担率を上げる方向で検討しており、将来的に医療費負担が増える可能性があります。介護費用も本当にピンキリで、一定額を確保しておかなければなりません。

また、車を運転する人であれば老後に1回は買い替える必要があるかもしれませんし、持ち家であれば修繕やリフォームが必要になることもあります。雨漏りなどの急な出費が発生する可能性もあります。老後は働いていないため、年金以上の収入はありません。こうした出費に備えて、それまでに蓄えておく必要があります。

こうした要素を考えると、リアルな老後の姿が全然見えてきません。将来変わるであろうものも含め、自分自身の生活に置き換えて必要な支出を考えた上で、老後資金設計を行わなければならないのです。

本当に必要な老後資金を計算する(9:28)

では、どうすればよいのでしょうか。答えは「1から計算してしまえばいい」ということです。自分ではできないと思うかもしれませんが、実際には誰でも計算できます。

まず、自分がもらえる年金額を計算します。誰でもアクセスできる「ねんきんネット」というサイトがあり、政府もこうした試算ができるように準備しています。年金収入がわかったら、次に自分の生活費を把握します。現在の生活費をもとに、老後に延長した場合いくらかかるのかを計算すれば、足りない金額が見えてきます。

これがいわゆる「2000万円問題」で話題になった、年金だけでは足りない生活費です。ただし、この金額は世帯構成によって大きく変わります。夫婦2人世帯では約1億円の年金をもらえるかもしれませんが、専業主婦がいる家庭や単身世帯では状況が異なります。子育てをした場合は厚生年金の加入期間が途切れることもあるため、年金額は下がります。

さらに、先ほど述べた医療費や介護費、個別に必要なお金も全て含めて計算すれば、いくら用意しておかなければならないのかがわかります。そうすると、今からどれだけ積み立てればよいのか、総額としていくら必要なのかも明確になります。

このような計算は決して難しいものではありません。やり方を知らないだけなのです。無料体験会では、こうした計算方法を丁寧に解説しています。そこで自分専用のファイナンシャルプランを作成し、本当に必要な老後資金を把握することができます。

老後に不安を感じるのは、結局のところ自分が行動していないから、そして数字を知らないからです。老後に必要なお金は1億円ではなく、あなた専用の数字があるはずです。その数字をしっかり計算し、安心して老後を迎える準備を始めましょう。

またこちらの動画「《7割の人が該当!?》退職金の〇〇を知らずに老後破綻する人の共通点」では、最新データに基づく退職金の現状と推移、7割以上が事前に確認していない実態、そして受け取り方を含む老後資産設計の重要ポイントをわかりやすく解説していますのでぜひご覧ください。