【円安・インフレ】日銀12月利上げがあるか?スケジュールから見える3つのシナリオ
現在、円安が大きく進行しています。このような状況下で、12月の日銀による利上げの可能性について、今後のスケジュールから分析していきます。
日銀の利上げだけでなく、諸外国の動きや日本国内の政治動向なども考慮する必要があります。今後のスケジュールから日銀の動向や為替の行方を見通し、マーケットの動きを理解するためのチェックポイントを解説します。
日本の個人投資家が最も気になっているのは、12月に日本の利上げがあるのかという点でしょう。高市政権から補正予算の案が提示され、21.3兆円という大規模な金額になりました。この影響も含めて考えていく必要があります。
為替の確認(1:40)

出典:Google Finance
11月29日現在の為替状況を見ると、チャートはV字のような形を描いています。140円台に一度タッチしたのは2025年の初頭、4月頃でしたが、その後再び円安に向かいました。特に高市政権が発足してからの円安が加速しており、現在は160円を見据えたような動きになっています。
160円を超えてくると、財務省も介入を検討する可能性が高まります。片山大臣も介入を辞さないという発言をしています。
今後の重要イベントとスケジュール感(2:33)
今後のスケジュールについて、日銀関連では12月1日に名古屋で講演があり、植田総裁の発言が注目されます。この公の場での発言から、植田総裁が何を重視しているのか、利上げについてどこまで織り込んでいるのかが見えてくるでしょう。
補正予算については、今期国会が12月17日までとなっており、17日に成立する見込みです。国民民主党の玉木代表と与党との間で給与所得控除を含めた合意があり、予算は成立する方向です。
この12月17日という日付が重要なのは、日銀の政策決定会合が12月18日から19日にかけて開催されるためです。17日に成立した補正予算で大規模な景気対策を打ち出した直後に、利上げを発表するのは非常に言いづらい状況です。このスケジュール感とタイミングが、植田総裁を悩ませているポイントと言えるでしょう。
ただし、12月19日に利上げをしなかった場合、円安がずっと続いてしまう可能性もあります。12月末には税制改正大綱が発表され、来年度予算の規模が明らかになります。高市政権は大規模な予算規模を取ってくると予想され、その規模が大きくなれば、さらなる円安と国債発行増加につながります。そうなると債券が売られて金利が上昇し、金利差が拡大して円安という流れになります。
現在、アベノミクスから続く円安方向の流れに加えて、積極財政という要素も加わっており、舵取りが非常に難しい局面となっています。
この日本のスケジュールに加えて、状況を複雑にしているのがアメリカの動向です。FRBによる12月10日のFOMCで利下げが行われるかどうかが注目されています。アメリカのドルは基本的にドル安が続いていますが、円安があまりにも強いため、相対的に円安ドル高になっているだけという見方があります。
12月10日のFOMCが実際の動きとしては最初に来て、それを受けて19日の日銀政策決定会合という流れになります。まず12月1日の植田総裁の発言で、市場参加者にどれだけ利上げを意識づけられるかが重要です。
FOMCで利下げがない場合、現状維持となり、円安基調は崩れないでしょう。FOMCで利下げが行われた場合でも、円高に向かわない可能性が高いと考えられます。なぜなら、現在の円安は日本独自の要因によるものだからです。ドルは世界的にはドル安ですが、日本円との関係だけで見ると、日本円がより円安基調であるため円安になっているという状況です。
結局は12月19日の政策決定会合次第となりますが、補正予算が17日頃に成立するというタイミングの問題があります。このタイミングで利上げを発表するのは困難ですが、0.25%上げたところでまだ緩和的であるというメッセージを市場に伝えられるかどうかが鍵となります。
さらに、アメリカのスケジュール感を見ると、12月末、おそらく25日付近に次期FRB議長の選任が発表されると考えられます。トランプ政権下では、ハト派、つまり金利を下げる方向の議長が選任される可能性が高く、そうなるとアメリカは利下げ方向に進み、ドル安方向に向かうと予想されます。
年末に税制改正大綱が出てくる頃には、予算規模が大きくなることが予想され、これは円安基調に触れる要因となります。
日銀は12月に利上げをするのか?(10:11)
日銀としては利上げをしない場合、次の機会は1月23日の政策決定会合となります。12月か1月かに利上げをするというのは、ほぼ確定的なレースと言えるでしょう。
高市政権として積極財政で景気回復を図る一方で、日銀はブレーキの役割、つまり金融政策による物価調整の役割があります。足元で円安が進み、物価も上がってきており、今月出てきたインフレ指標も2%程度を示しています。日銀も円安が物価に影響を与えるという態度に変化しているため、円安を抑えるための利上げは十分考えられます。
日銀としては、1%の政策金利があればすぐに速やかに上げていきたいという思いは、植田総裁が就任当時から持ち続けている考えです。1%になったところで本当に冷え込むのかという疑問はありますが、倒産件数が増えたり、体力のない企業は影響を受けるでしょう。特に製造業が影響を受けますが、国内製造業と海外製造業では状況が異なります。
まず1つ目のチェックポイントは、12月10日のFOMCの利下げがあるかないかです。そして12月19日に日銀が利上げできるかどうかが重要です。この利上げができるかどうかは、政府への忖度の有無や円安を放置するのかしないのかにかかっています。
財政政策は実施しますが、金融政策としては引き締め方向になる可能性があります。逆に言えば、高市政権が積極財政をしてくれることによって利上げが早まるという見方もできます。そこが政府と日銀の足並みが揃っているかどうか、合意が取れているかどうかの問題です。
結局は円高基調になるかどうかが重要です。いずれにしても、多少は円高方向に振れる必要があります。160円は行き過ぎであり、150円付近で推移してくれるのが望ましいですが、高市政権発足からずっと160円の方に向かっており、その速度も早くなっています。
そうなると、一度は円高を試したいという動きになるでしょう。試すポイントとしては140円です。140円は何回も跳ね返されているラインであり、これを超えるかどうかが次の局面となります。140円を切ってくると130円が見えてきて、さらに120円台も視野に入ってきます。そうすると、アベノミクスから生まれてきた円安基調が止まることになります。
それを株価や債券市場などにあまりインパクトを与えずに発表できるかが、日銀の腕の見せどころとなります。それができないと、以前あった植田ショックのような形で相場を不安定にさせてしまいます。年末年始は価格変動商品のボラティリティが高くなる傾向があるため、投機筋が入ってきてさらなる円安や一気に円高といった動きも出てきてしまいます。
利上げ方向は間違いありませんが、それが12月になるのか1月になるのか、12月になることに対する障壁は補正予算のスケジュールということです。利上げはほぼ確実に入ってきますし、円高基調も大なり小なり入ってくるでしょう。
個人投資家が今すべき心構え(16:27)
個人投資家、特に長期投資家としては、現在の円安で利益が出ている状況から、今年から来年にかけて調整の時期に入ってくる可能性があるという心構えを持っておくべきです。10%程度下がる可能性があり、140円となれば10%少々の変動になります。
アメリカの方も、今まで牽引してきたエヌビディアを含むAI関連にも限界が見えてきています。それは電力不足の問題です。AIが今の産業を支え続けるとなると電力が全く足りないため、これだけの成長は見込めないということが透けて見えてきています。そうなると一旦調整期に入り、次世代エネルギーなどの発展を待つ動きになる可能性があります。
アセットアロケーション運用や長期投資家としては、バランスを保ちつつ、今まで利益が出ていた時代の利益は、それなりに相場に返すという動きが出てきます。その心構えをしておく必要があります。
全世界投資であれば平均で年7%程度ですが、それを大きく上回る動きが出ています。しかし、1ヶ月でそれを吐き出してしまうような動きもあるため、行き過ぎ感は当然感じておくべきです。
現在の利益が全て保持されるものではなく、長期投資家は保有し続けて、平均的な利回りがしっかりと手元に残るように運用していくことが重要です。一時的にうまくいっているからといって脇を緩めて攻めるのではなく、市場の動きもしっかりと見ながら資産をリスクヘッジしていく必要があります。
利益がそのまま全て自分の利益というわけではなく、多少は返す時期が出てきます。来年もそうかもしれませんし、スケジュール感から見ると少なくとも1月頃にはそういったことが起こってくるでしょう。FRB議長の選任やFOMCも1月28日に予定されており、その時に政策が揃っていくと、円高への動きは多少見えてくるでしょう。
現在の円安は行き過ぎており、実効為替レートを見ても日本円は空前の円安です。それは所得や世界との格差が生まれている証拠でもあるため、それを是正してくるのは当然の動きです。
円安に対するリスクは十分感じられたと思いますから、海外資産を一定数持っておくことは間違いありません。ただし、今は行き過ぎた円安のおかげでかなり利益が出ているという状況であり、それが当たり前というわけではありません。
その差が生まれた時にしっかりとバランスを取っていく必要があります。利益が出たものを日本株式に移したり債券に移すことで、バランスを良くしておくのがアセットアロケーションの強みです。長期投資という観点で見た時に、ボラティリティを抑え、リスクを抑え、リターンをできるだけ自分の資産の中に留めておくという作業が必要です。
今後、よりそういった場面が出てくるでしょう。特に来年はその場面が大きく出てくると考えられます。今のうちから株式一辺倒や海外資産一辺倒のポートフォリオを持っている方は、ある程度バランス分散投資を心がけてシフトしていくタイミングだと言えます。
まとめ(21:02)
年末に向けて円安がずっと進んでいる中で、日銀や政府による予算などでいろいろなイベントが出てきています。短期的な動きや市場参加者の考え方に同行することはできませんが、それを受けた上で、資産をどうやって守っていくのか、どうやって安定的に増やしていくのかを考える必要があります。その答えはやはり王道である長期投資と分散投資になるでしょう。
こんな動きがあっても、投資はいつ始めても問題ありません。来年から、2026年から新NISAで投資を開始しようと思っている方もいらっしゃるでしょうが、時間分散を取り入れるのであれば全く問題なく開始できます。市場の動きに左右されずに長期投資をするという姿勢で参加していただければと思います。
日銀が忖度するのかしないのか、円安を放置するのかしないのか。放置すれば円安に苦しんでいる方から批判が出ますし、高市政権としても円安がずっと進んでしまうと問題です。せっかく経済政策をして給付金を上げたとしても、それでインフレに苦しむということであれば本末転倒です。バランス感覚が求められています。特にアメリカの動きも慎重に見ながら、資産運用を継続していきましょう。
またこちらの動画「日銀が“ETFを売る”と決めた日。「終わりの始まり?」」では、日銀のETF売却の背景と政策意図、マーケットへの影響、そして個人投資家がとるべき戦略を分かりやすく解説していますのでぜひご覧ください。





