関税ショックでも株が落ちない本当の理由と今すべき資産戦略
本記事では、トランプ関税発表後の株式市場の反応と長期投資戦略について解説します。
関税ショックにも関わらず株価が下落しなかった理由を多角的に分析し、リーマンショック時のデータを用いた実証的な検証も含め、時間を味方につけた資産運用の重要性を詳しく解説していきます。
スタート(0:00)
トランプ大統領が8月1日から日本に25%の関税を課すと発表したにも関わらず、今回は株安にはなりませんでした。4月には大きく下落したにも関わらず、なぜ今回は違ったのでしょうか。この背景には複数の要因が絡み合っています。
投資家の中には「また下がるかもしれないから今は投資を控えよう」という声もありますが、長期投資の視点で考えれば、そうした短期的な感情に左右される必要はありません。市場の動きは誰にも読めないものだからこそ、時間を味方につけた資産運用が重要になってきます。
株が下がらなかった理由①TACO(1:05)
今回株価が反応しなかった理由の一つに、トランプ大統領の「TACO(タコ)」と呼ばれる傾向があります。これは「Trump Always Chickens Out(トランプはいつもビビッてやめる)」の略で、発言してもすぐに引っ込めるという意味です。
過去の経験から、投資家の間では「言ったはいいけれども、また引っ込めるのではないか」という狼少年的な見方が広がっています。また、8月1日という実施時期まで相当な時間があったことも、様子見ムードを助長した要因の一つと考えられます。
株が下がらなかった理由②米景気・世界景気のソフトランディング期待(2:03)
もう一つの大きな要因は、アメリカの経済指標が予想ほど悪化していないことです。トランプ関税による悪影響が懸念されていましたが、実際にはここ3か月間のデータを見る限り、そうした影響は表れていません。
この背景には、経済学における二つの対立する理論があります。一つは従来の自由貿易派の考え方で、グローバル化を進めて比較優位に基づく分業体制を築けば、効率的で安価な商品が世界中に流通するというものです。この理論に従えば、関税は消費者にとって増税となり、デフレ効果をもたらすはずでした。
しかし、トランプ関税派は全く逆の主張をしています。関税を課せば、輸出側がその分だけ価格を下げて対応し、結果的にアメリカ国内への投資が促進されて雇用が創出されるという考え方です。さらに、関税収入を財源として法人税や所得税の減税が可能になり、実質的な減税効果をもたらすと主張しています。
実際に、トヨタなどの企業は25%の関税分を価格に転嫁せず、自社で吸収すると表明しています。これはまさにトランプ関税派の理論通りの展開と言えるでしょう。また、関税収入も増加しており、少なくとも3か月間のデータを見る限り、従来の学者が予測していたような悪影響は生じていません。
ただし、これはあくまで3か月という短期間のデータに基づく結果であり、今後も同様の傾向が続くかどうかは不透明です。メーカー側にも限界があるため、長期的な影響については引き続き注視が必要です。
サプライチェーンの観点から見ると、関税が高くなることで部品調達コストが上昇し、最終的にアメリカ国内でのインフレーションにつながる可能性もあります。一方で、トランプ派は輸入品が高くなれば国内品の競争力が向上し、国内産業の復活につながると主張しています。
この二つの理論は正反対の内容であり、どちらが正しいかは実際の社会実験でしか証明できません。現在はまさにその実験の真っ最中と言えるでしょう。
長期投資家が取り得る手段とは(12:13)
こうした市場の不確実性を前にして、長期投資を志向する投資家はどのような戦略を取るべきでしょうか。結論から言えば、短期的な市場の動きに惑わされる必要は全くありません。
多くの投資家が投資を始める理由を思い出してください。老後資金の準備が最も多い動機であり、一獲千金を狙っているわけではないはずです。10年、15年といった短期間で必要になる資金を投資で用意しようという人は稀で、むしろ老後という長期間を見据えた資産運用が主な目的のはずです。
投資と資産運用には明確な違いがあります。資産運用は将来使うお金を準備するための手段であり、単純に金額が増えればよいというものではありません。インフレーションによって貨幣価値が目減りしては意味がないため、購買力の維持向上が重要な目標となります。
そうした観点から考えれば、長期投資、資産分散、時間分散は必須の要素です。長期投資であれば使う時まで売却する必要がないため、今買っても下がった時に買っても上がった時に買っても問題ありません。重要なのは時間を分散して購入することです。
この考え方を最も実践しやすいのがドルコスト平均法です。毎月一定額を投資することで、価格が高い時は少なく、安い時は多く購入でき、自然にタイミングを分散できます。特にサラリーマンのように一定の収入がある人には理想的な投資手法と言えるでしょう。
具体例として、リーマンショックのピークである2007年10月から毎月1万円の積み立て投資を現在(2025年7月)まで継続した場合、元本213万円が445万円となり、約2倍になっています。年率7.81%という運用成績です。最悪のタイミングで投資を開始したにも関わらず、このような結果となっています。
興味深いことに、リーマンショック直後のボトムから投資を開始した場合の運用利回りは8%とほぼ変わりません。積立投資においては、開始タイミングの差がそれほど大きな影響を与えないことが分かります。
ただし、投資にはリスクが伴うことも忘れてはなりません。積立投資だからといってリスクがゼロになるわけではないのです。例えば、10年後に400万円の資産があった場合、その時点での20%の下落は80万円の損失を意味します。また、高値圏で一括投資した場合のインパクトは積立投資よりも大きくなります。
こうしたリスクを軽減するために重要なのが資産分散です。今回のトランプ関税ショックで大きく動いたのは主に株式であり、他の資産クラスへの分散投資により、下落幅を大幅に抑制することが可能でした。
まとめ(21:56)
トランプ関税ショックと呼ばれた出来事は、当初予想されていた悪影響が3か月間のデータを見る限り現れていません。しかしこれが今後も続くかどうかは不透明であり、引き続き注視が必要です。
重要なのは、一つの理論や予測にすべてを託すのではなく、幅広く資産を分散して運用することです。また投資開始のタイミングに悩んでいる人も、リーマンショックのような最悪のタイミングで始めたとしても長期投資であれば十分な成果を上げられることが実証されています。
10年以上の投資期間があるのであれば、積立投資から始めることを推奨します。ただし、高値掴みのリスクや資産が大きくなった後の変動リスクは存在するため、正しく恐れ正しく理解した上で投資を開始することが重要です。
投資はできるだけ早くできるだけ少額から始めることで、安心して継続できます。適切な第一歩を踏み出すためには、十分な知識と準備が必要ですが、それさえ整えば長期的な資産形成の強力な味方となるはずです。
またこちらの動画「《急騰・暴落対応》ドルコスト平均法なら積立投資はいつ始めてもOK!改めてその強さを確認【きになるマネーセンス572】」では、積立投資をするときによく聞くドルコスト平均法について詳しく解説していますのでぜひご覧ください。