以疑決疑、決必不当

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MoneySense代表のシュウAs浅田修司です。

私はいつも話が長いと言われます。自覚もあります。今回のニュースレターも超がつくほど長くなっていますね。

消化不良をなくすようにすると、自ずと文字数が多くなってしまいます。では、細かく区切ればいいのでしょうが、時間との戦いもあります。。。実に悩ましいですね。。。

いつも感じることは、シンプルイズベストと以下の言葉とのせめぎあいです。

「以疑決疑、決必不当」(疑を以て疑を決すれば、決必ず当たらず)

確信のない根拠のもとにあやふやな気持ちで判断すれば、結果は必ず見当はずれとなる、との意味。
中国の古典『荀子』にある言葉で、迷いを残したままの決定を、厳しく戒めて物事を固める前に、よく事実を調べ、確認して、考え抜く必要性を説く言葉です。

私の指針としては、私が決断してキュレーションして説明するときは、シンプルイズベスト。あなたが理解し、判断する必要があるものを説明するときは、「以疑決疑、決必不当」という風にしています。

さて、「年金年間」パート2としてお話を進めています。

おそらく今回が一番の難関ではないかと思っています。今回を超えれることができれば、あとはラクなんじゃないかと。

この年金財政検証のニュースレターは、大きく4つに分けて話を進めていきます。

  1. 過去の年金財政のおさらい
    1. 積立方式から賦課方式への転換
    2. マクロ経済スライドの導入
      1. 賃金スライド
      2. 物価スライド
      3. マクロ経済スライド ←イマココ
    3. 年金保険料の見直し
    4. 国庫負担分の増額
  2. 将来の年金財政はどうなっていくのか
  3. 年金財政検証から見える政府の思惑
  4. 私たち個人投資家はどのような行動をしていったらよいのか

今回もひきつづき、1.過去の年金財政のおさらい(その3)としてお話していきます。

1.過去の年金財政のおさらい(3)

まずは、前回までのおさらいから始めていきましょう。

2004年の年金財政検証で、このままでは【年金財政が破綻してしまうことが確認】されました。

そこで、政府は大きく4点について改革を行うことを決めました。

  1. 積立方式から賦課方式への転換
  2. マクロ経済スライドの導入
  3. 年金保険料の見直し
  4. 国庫負担分の増額

簡単にいえば

  • 年金は守ろう!!・・・1
  • 支出を減らそう!・・・2
  • 収入を増やそう!・・・3~4

です。

前回は、「支出を減らそう!」の2.マクロ経済スライドの導入の途中までお話しました。

年金には3通りのスライド制があります。

  1. 賃金スライド
  2. 物価スライド
  3. マクロ経済スライド

賃金スライドは、既存の年金受給者はすでに凍結済み。

物価スライドは、この物価スライドは毎年更新されて、その都度年金額に反映されるはずでした。

インフレ(物価上昇)時は増額、デフレ(物価下落)時は減額されます。増額しても、減額しても、買えるものの数は変わらず、生活の質は変化がないことも確認しました。

しかし、2000年からの年金額を減額できなかったツケが残っており、現在でも「年金の払いすぎ」が起こっている状態です。来年2015年4月にやっと正常に戻る見通しとなっています。

2000年に減額しないことを決定してから、15年もの年月が経過してしまいました。その間、年金財政はさらに悪化して10兆円以上ものお金を現役世代がすべて負わされているのです。

ここまでが前回までのおさらいです。

今回お話する3つ目は、3.マクロ経済スライドです。

3.マクロ経済スライド

本当はこの話をはじめからしたかったのですが、賃金スライドと物価スライドをお話しないと理解できないので前置きがすごく長くなりました。

年金額を下げ続ける新たな仕組みとして作られたのがこの「マクロ経済スライド」なのですが、法律が出来て10年が経過した今まで、一度も発動していません。

理由は、物価スライドで起きた「年金の払いすぎ」が解消されて、正常な年金制度が開始してから適用する、と法律で決まっているからなのです。予定では来年4月以降に正常化しますので、実質2016年4月からということになります。

結論から言えば、正常な年金制度になって以降は、「賃金スライド」と「物価スライド」に加えて

  • 少なくとも2025年までの間、
  • 既存の年金受給者を含めて、
  • インフレ率(物価上昇率)を上限に、
  • 年金額を毎年最大【0.9%】ずつ減額していく、

という制度が「マクロ経済スライド」と呼ばれるものです。

そして0.9%という部分が「スライド調整率」と呼ばれるものです。

上の条件ですと、3つのケースが考えられます。

(1)物価が0.9%を超えて上昇したとき

例えば、物価が1.2%上昇したとすると、年金は1.2%-0.9%=0.3%上昇することになります。
(今までの物価スライドでは1.2%上昇)

(2)物価の上昇が、0.9%以下のとき

例えば、物価が0.4%上昇したとすると、0.4%-0.9%=-0.5%とマイナスとなりそうです。

しかし「インフレ率(物価上昇率)を上限に」がありますので、0.4%だけ下げることになり、物価スライドとあわせてゼロ、つまり前年度と同じ年金額となります。
(今までの物価スライドでは0.4%上昇)

(3)物価が上昇せず、下がったとき

例えば、物価自体が0.3%下がった(デフレ)とすると、-0.3%-0.9%=-1.2%年金額が下がるのではなく、「インフレ率(物価上昇率)を上限に」がありますので、インフレ率はマイナスなのでゼロ、物価スライドで-0.3%、つまり、物価が下がった部分0.3%のみ減ることになります。
(今までの物価スライドでも0.3%減額)

これだけ見てもややこしいのですが、これだけ覚えても年金の理解は深まりません。

理解を深めるためにもできるだけ噛み砕いて「マクロ経済スライド」の中身について説明したいと思います。

そもそも名前にある「マクロ経済」がわかりにくい(笑)こんな言葉を使うからよけいにわからなくなるんでしょうね。

マクロ経済指標を使ってスライドしているわけではありませんし、お役所のネーミングセンスを疑います。

わかりやすい単語に置き換えるなら「人口スライド」です。

前々回、年金を積立方式から賦課方式に転換させるとお話しましたね。

「人口スライド」と呼べる理由の説明にその式がわかりやすいので再度登場いただきます。

【収入】「年金保険料」+「国庫負担分」+「積立金運用益」
【支出】「年金給付」
【貯蓄】「積立金」

を挙げました。

【貯蓄】が完全枯渇するまでに、
【収入】で【支出】をまかなえる賦課方式に完全に移行する

つまり現状の
「【収入】<【支出】」を
「【収入】=【支出】」になるように
制度を見直していくことになります、とお話しました。

収入と支出を数式にすると

「年金保険料」+「国庫負担分」+「積立金運用益」=「年金給付」

にするということです。

これではわかりにくいので式を整理していきます。

まず、賦課方式に完全に転換できれば、「積立金」は要らなくなります。

ということは、【収入】にある「積立金運用益」もなくなります。なので消してしまいましょう。

「年金保険料」+「国庫負担分」=「年金給付」

となりました。

また「国庫負担分」は、「4.国庫負担分の増額」で再度出てきますが、いまは「年金給付」の1/2と決っていますので、

「年金保険料」×2=「年金給付」

と便宜上してしまいます。

すごく簡単になりました(笑)簡単にしすぎましたのでもう少し細部を見てみましょう。

「年金保険料」「年金給付」はそれぞれ、

「年金保険料」=「平均所得」×「保険料率」×「現役世代の人口」
「年金給付」=「年金額」×「年金受給者の人口」

で表せます。

つまり、上の式は

「平均所得」×「保険料率」×「現役世代の人口」×2=「年金額」×「年金受給者の人口」

という式になりました。

いまは、【左辺<右辺】になっているので【左辺=右辺】にしたいのです。ですから、この左辺を上げていって、右辺を下げて行きたいのです。

左辺を上げる=現役世代の負担
右辺を下げる=年金世代の負担

という構図になります。

現役世代の負担として

「平均所得」(=給与)は上げていきたいし、
「保険料率」もすでに上げはじめています。

いままではこれら2つだけが行われて来ており、左辺だけが上がっています。つまり現役世代のみ負担が増えていた、ということになります。

でも、年始からの年金年間パート1でお話した内容でおわかりのようにいまの年金制度でもすでに現役世代は、支払った保険料総額が、年金として全額受け取れないのです。
これ以上はいい加減、現役世代から反発が来ます。ですから、年金世代にも負担をして貰う必要があります。

「年金額」も下げていきたい。

でも、年金世代は経済的には弱者です。なので大義名分が必要になってきます。そこで出てくるのが【人口】です。

ご存知のように、日本は少子高齢化社会ですので、「現役世代の人口」はますます減っていき、「年金受給者の人口」はますます増えていきます。

現役世代の人口が減っていて、「保険料率」を上げても間に合わず、これ以上、上げることもできません。

好景気になれば、「平均所得」が上がって保険料総額は増えますが、ご存知のように確実ではありません。

そこで、いまの年金制度を維持するために年金世代も共に、人口減少の部分は痛みを分かち合ってください、ということになったのです。

具体的には、

「現役世代の人口」の減少率と
「年金受給者の人口」の増加率
(≒マクロ経済スライドでは「平均寿命の伸び率」を使用)

を計算して、その分、年金額を減らしていきましょう、ということになりました。

具体的な数字として、2004年から2025年までの平均値は、

「現役世代の人口」の減少率=-0.6%
「平均寿命の伸び率」=0.3%

になるので、あわせて年金額を「毎年-0.9%」することになりました。

いつまで、いくらまで下げるのか、ですが、それは前々回「所得代替率」でお話しましたね。

政府は「所得代替率」を50.2%になるまで相対的に年金額を下げ続けることにしたのです。

しかし、目に見えて年金額が下がってしまうと、年金が減らされたように感じてしまう「貨幣錯覚」があります。政府はそれを逆手に取ることを考えました。

そのために「インフレ率(物価上昇率)を上限に」という制限を設けました。

これにより、物価が上昇して年金額が上昇するときだけ適用されるようになり、見た目としては年金額は下がらないことになります。

さすがにデフレのときは下がってしまいますが、物価スライドのマイナス凍結で15年に渡る「年金の払いすぎ」になってしまった同じ轍はもう踏めません。

なので、デフレのときは丁寧に説明して納得してもらうことにしたようです。実質、生活の質は下がりませんので、説明にも一定の理解が得られるでしょう。

こうして、

  • 少なくとも2025年までの間、
  • 既存の年金受給者を含めて、
  • インフレ率(物価上昇率)を上限に、
  • 年金額を毎年最大【0.9%】ずつ減額していく、

として「人口スライド」=「マクロ経済スライド」制度ができました。

開始時期の予定は、2016年4月からになりそうです。

詳しくは「3.年金財政検証から見える政府の思惑」でお話することになりますが、2014年の年金財政検証の中には、この「インフレ率(物価上昇率)を上限に」という制限すら取っ払わないと間に合わないという「オプション検証」をしています。

それほどまでに今の年金は破綻に限りなく近づいていると言えます。

ですが、自公政権は「後期高齢者医療制度」導入の轍も踏みたくないのですね。

このときのマスコミや民主党は、制度の中身の話より「後期高齢者」という言葉が「なんかイヤ」という感情的な報道や議論が多くなされたように思えます。「姥捨て山」とか言ってましたね・・・

事実上、この制度を導入したことで、自公は民主に政権を渡すことになります。後期高齢者とは75歳以上のことを指しますので、まさに年金世代。腫れ物を触るようにという気持ちもわからなくはありません(滝汗

長くなりましたので、今日はこのへんで。

次回は第1回目に予告してできませんでした、「所得代替率」の変遷から見える歪んだ実態のお話です。

質問や感想などありましたらお気軽にこのメールに返信してください。
ひとことでも頂ければ励みになります。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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